ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 「面白い」のつくりかた

本 「『面白い』のつくりかた」佐々木健一さん著

モナリザのように「分かりそうで、分からないこと」が人を引きつける、というのはよく聞く話

じゃあ、「その分からなさって何?」という疑問を考えさせてくれる

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たとえばジブリのアニメは「線の多さ」が特徴で、一回みただけでは理解できないので、何度も見たくなると著者はいう

つまり「情報量」が多いのだけど、情報がおそらく階層的に整理されているとか、ひとつひとつの線が、理由のある線になっているのが特徴なんだろう

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以下、自分で「分からなさ」の例を考えてみる

奈良の大仏さんの頭は「ツブツブ」で覆われている

一見して、「それが頭髪の表現である」は誰でもわかる

(頭がお坊さんのようにツルツルだったら、人は二度とそこを見ない)

しかし何気にツブツブをよく見ると、「それは渦を巻いている」ことがわかる

さらに、「ツブツブの数にも仏教的な意味合いがある」(ハズ)

・・・このように、大仏さんの魅力はサイズから始まって、「仏教的な意味の量」がきちんと表現に編み込まれいて、かつそれが「美しさの量」も兼ね備えていて、見る人の成長度合いに応じた見え方を返してくれる造りになっているのだろう

だから何度見ても飽きないし、何度も見たくなる

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「面白い」のつくりかた (新潮新書)

「面白い」のつくりかた (新潮新書)

  • 作者:佐々木 健一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/09/13
  • メディア: 新書
 

 雑にまとめると、何かを作るときにそれが面白くなるためには、その表現の中に

「意味の体系や、重層的な美しさが込められていること」

という方法論がひとつ言える

ただ、自分で「意味や美の体系」を作り出すのは大変だから、歴史のなかで編まれてきた何らかの価値体系を自分の中に取り込むことが第一段階

自然の中から取り入れるのも第一段階

そして、それを今度は言語化するなり、技術として昇華させるなりして、実際の表現の中に練り込んでいくのが第二段階

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この話を受け手の側から見ると、

「分かること」は、

 作品に表現されている「何らかの共通の価値体系の”存在”自然の”存在”」で、

「分からないこと」は、

その「価値体系内の情報の階層性の詳細だったり、省略されたもの

ではないかと思う

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 個人的に今、新しいiPhoneアプリを作っているのだけど、SNSで友人にアイデアの広がりをもらったり、たまたま読んだ本の最初のページに、アプリの方向性を教えてもらえる言葉に出会ったりしている

自分だけでなくて、周りの人や遠くの人が受け継いできた価値の体系を、きちんと受け取ると、だんだん自分が何を作っているのかが見えてくる

つまり、「作りたい何かがあるのは最初から分かるのに、自分が何を作っているのかはよく分からて、作っている中でだんだん分かってくる」ということが起きている

実は、作る側も「分かりそうで、分からない」の吸引力にやられるんだ、と

むしろ吸引力にやられて作ったものがいいんじゃないか、と