ココロミにきみ

本と体とプログラミング

映画 君の名は

「君の名は」を見にいく。夜空の絵が綺麗でRADWIMPSの曲がすごく合っていた。ただ、感動してる人たちの気持ちがイマイチ分からなかった。年代的に主人公たちの世界から離れてしまっただけかもしれないけど、きっと求めるものが違った。

僕は従来の意味での「映画」を求めて行っていたが、この映画は(僕にとっては)ミュージッククリップだった。音と映像のライブと言ってもいい。従来の「映画」の枠組みとして新しいものを作り出したというよりは、音と絵がそれぞれ好きなものを求めて、過剰に、同時にそこに存在しているという「ライブ映画」だった。

トーリーはテイストだから絵と音を邪魔してはいけないわけで、日常性というか因果律というか、納得性はあってはいけなくて、そこを求めていると当然裏切られる。

って僕は感じてるけど、たぶん感動してる人たちにとってはストーリーも、ちゃんと納得できるんだろうなー。

ここに世代的な断絶があるんじゃないか?

例えば宮崎駿監督の作る映像は、理屈じゃなくて体感としての「納得性」が得られるんだけど、他の多くのアニメは、「走ってます」「恋愛してます」という台本のト書きを「映像という記号」にしたものに感じる。

つまり大事なのは感覚ではなくて、脳みそが「映像という記号」をテキストデータ的に理解して解釈すること。逆にいうと「納得性」は体感ではなくて、脳みそ経路でしか伝わらない、伝わりにくい世代になってるのかな?

もしくは映画という表現が直接与える「納得性」なんてどうでもよくて、音と映像というパーツをそれぞれ別々に取り込んで、自分の脳の中で好きなバランスで組み合わせて楽しむように焦点を合わせて作られてるんだろうか。

 

「君の名は」のヒットは、感覚同士が勝手につながりあう「体感」の時代の終わりで、代わりにそれぞれの「感覚」が別々に働いて、脳の中で理性的に「感覚」が処理されて、記述される時代になったのかもしれない。

 

 

映画 レッドタートル

スタジオジブリの最新作「レッドタートル」を観てきた。セリフが一切なく、絵だけの映画。ちょっとでも興味のある人は誰の感想も知らずにまず観たほうがいい。言葉がない分、他人の言葉の視点からしか見れなくなる。観た後でジブリの雑誌「熱風2016年9月号」の感想集を読むべし。

 島に流れついた男の一生が描かれている。男は島から逃げ出そうとするが、うまくいかない。大きな亀や島の「自然の意思」みたいなのが邪魔してるように思えた。逆に「その意思」はもしかしたら、ちゃちな筏で逃げ出そうとして男が無駄死にしないための慈悲かもしれない。

言葉ない映画は観客が自分のほうから何かを取りにいかないと、あっと言う間に終わってしまう、終わってしまった。必死に思い出そうとすると、灰色の島となぜかカラーで記憶に残る海。海が生きていて、島(=男の意識)は死んでいるのかもしれない。

島に閉じ込められた人生というのを考えてみる。そこに家族や友達がたくさんいたら、けっこう大丈夫なのかもしれない。それ、普通に日本で暮らしてるのと同じか。島に一人はつらい。二人が耐えられるミニマムか。三人はけっこう安心かも。男女の人数の振り分けも大事になるけど。

たとえいま日本で暮らしてても、また一緒に暮らす人がいても、一人だって感じてる人は多い気がする。そういう人はこの島の主人公の男と同じ。より辛いか。

 

レッドタートルの存在は何なんだろう。単純にいい奴とはとても思えない。いいとか悪いとかを超えてそうな気はする。そういうのに心を開いたら、なにか起こるかもしれない?求めていたのと違うレベルで何かが返ってくる象徴なんだろうか。

いったん、自分が受け取ったものをトコトン考えた後で、もう一度みたらきっと違う感想になるんだろうな。そして何年後かにまた観て。

 

 

本 内田樹の生存戦略

内田樹さんが雑誌GQで連載してるQ&Aの書籍化。雑誌の連載だけあって、一気によまずにちょっとずつ日を開けてよむといい感じ。内田さんがよく話題にする、大学でレポートの提出期限を過ぎた生徒の話が気になった。

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消費者の行動を内面化した多くの生徒は教育を受けるときも、最低限の努力(=お金)で単位(=商品)の取得を目指す。ある生徒は休んでレポートの期限を聞き忘れ、結果不合格にされたことに対し、そもそも先生や大学側が休んだ生徒に期限を伝え直すべきだと主張し、何度も教務課に来て抗議したり、親を連れてきて抗議し、最後には弁護士を立てて訴えるとまで言ってきたと。

勉強に対しては最低限の努力しかしないが、自分が賢い消費者であることを証明するためにはどんな努力も惜しまないという。 

悩める人、いらっしゃい 内田樹の生存戦略

悩める人、いらっしゃい 内田樹の生存戦略

 

この生徒を笑うのは簡単だけど、きっと自分も同じことを別のなにかでしている。

よくある、ポイントカードが財布にたくさん入っているのも、賢い消費者であることは証明できる(かもしれない)が、分厚い財布の不便さや、財布の傷みや、お店を無意識に限定してしまう、生活の不便さを我慢してるって同じ構図じゃない?

他にもAmazonなどの買い物で、少しでも安い同じ商品を探すために有限な人生の時間を費やしてたり。買ったものが失敗だと途中で気付いても、最後まで見たり、食べたり、ずっと捨てられなかったり。食べログに載ってない店は目の前にあっても入らなかったり。効果が明示されてないものは(構造的に明示できないものであっても)選択肢に最初から入らないとか。

キーワードは「賢い消費者であることを無意識に最優先にしてしまうこと」その裏で何を犠牲にしてるんだか。

…てな感じに自分でブツブツ考えるためのテーマに良い本。

本 人は皮膚から癒される

山口創さん著「人は皮膚から癒される」

多くの人が触れ合うことは大事なのを知ってるけど、その具体的な効果と理由を科学をベースに柔かな文体で伝えてくれて、触れたくなる。

著者曰く、愛情を持って親しい人に触れるとその人の肌が暖かくなる。そうすると脳内でオキシトシンという物質が出て、不安やストレスが和らいだりする。

結果、その触れられた人は(触れた人も!)困難なことに挑戦するときに、一人で立ち向かうよりも実際に少ないエネルギーで対処している。脳が一人のときより少ないエネルギーで大丈夫と判断する、つまり困難が少ないように感じられる

さびしい人が太るというのは、一人で何事にも立ち向かう人は脳が多めのエネルギーを用意しておこうと指示して体にためてしまうのが原因だろうと。

人は皮膚から癒される

人は皮膚から癒される

 

 動物の赤ちゃんたちがムクムク集まってかわいい写真をよく見るけど、写真映りよくそうしてるわけではなくて(笑)、体温をお互いに保温しあうことで、よりストレスなく、快適に、生き延びすいから寄り添っているんだと。

例えばもし親しい人がうつ病だったら、なにかに理由をつけて触れたり、話さなくてもそばにいることが感じられる距離にいることがとても大事なんだなと。これが結婚している人のほうが不安が少なくなって長生きになる理由なんだろう。

本 GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代

今週のお題「プレゼントしたい本」

仕事でモヤモヤした思いを抱えている同僚Aに、この本から得たことを伝えた。Aはつねに回りの困ってる人の力になろうとする「与える人」だった。みんなその人がいないと仕事が回らないことを知っている。でもAは「私はこの仕事でいいのだろうか?」とずっと悩んでいた。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

 

 Aは今は間接部門で働いているが、以前はお客さんに直接接する現場で働いていた。以前の仕事のほうが楽しかったらしい。

本によると「与える人」のあり方は二分され、「与えすぎて燃え尽き症候群になってしまう人」と、「自分にも与えてどんどん大きな存在になっていく人」に分かれると。

Aはおそらく前者に近い状態なんだろうと。その理由は「与える人」であるAが、一番与えたいモノが今の間接部門では「他人に与えられず」、さらにその結果「与える人」が一番の報酬と感じる直接的な「感謝」が得られないからじゃないかと。

 

Aの仕事へのモヤモヤが解消されてほしい。ただ、Aが去ってしまったら、自分も含めて困る人たちがたくさんいる。パンドラの箱を開けてしまったかもしれないけれど、この本の趣旨によれば相手の一番の希望を叶えるように手伝い「与える」ことが、大きく巡って全体の良い状態を作ると。

職場に数少ない大切な「与える人」がダメになってしまわないように、ちょっとだけ自分がお手伝いする「与える人」になるための本でもある。

本 筋膜リセット

「筋膜リセット」磯崎さん著。 

これ、効くわ。テニスボール2個を肩甲骨の間や、骨盤の下において仰向けになってグリグリ動くとイタ気持ちいい!グリグリ10分やったら確かに股関節がいつもより開く。

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お尻の一つ内側の筋肉、中臀筋の役割を教えてもらえたのがよかった。中臀筋が日本人の場合は働きすぎて、(リラックスする間がなく)そのせいで他の筋肉や筋膜と癒着したりゆがんだりして、それが腰痛や股関節の硬さにつながっていると。

さらには、筋膜リセットを一人でやる方法としてテニスボールが使えるのも収獲だった。筋膜の癒着をはがすためにボールの上に寝て、剥がしたい筋膜に圧をかけて、その上で筋膜をずらす動きをする。たしかに剥がれそうな気がする。

肩こり・腰痛・膝痛がたちまち消える!  筋膜リセット

肩こり・腰痛・膝痛がたちまち消える! 筋膜リセット

 

 筋膜リリースの違うやり方をテレビで見たことがる。MRIか何かで映された筋膜のゆがみ&癒着箇所に注射で水をさしただけで、即座にゆがみが解けていっていた。それまで痛がっていた患者さんが不思議な&嬉しそうな顔をして去っていった。

そういう別の効果的な方法と組み合わせることはできないんだろうか?

さらに、ゆがみや癒着はそれ自体が存在することを前提に、体の動きや姿勢がもう作られてしまっているはずなので、全身の癒着を同時にはがして、そのより自由な動きや姿勢に慣れるまで3ヶ月は剥がし続けて、姿勢の矯正を意識的にセットでやらないといけないんだろう。簡単ではないな。

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ともあれ、すぐやろう!と思ってアマゾンで検索したら、最近ネットでテニスボールを買うのは筋膜マッサージ系の人ばっかりなことを知った。

BRIDGESTONE(ブリヂストン) XT8 1缶(2球入)  BBA2XT

BRIDGESTONE(ブリヂストン) XT8 1缶(2球入) BBA2XT

 

 著者の身体観では、日本人は欧米人に比べて大臀筋(お尻の一番外側)が劣っているため、中臀筋を酷使することになって癒着して腰痛が多いんだという。

逆に思うのは、普通に考えて日本人は大臀筋をあまり必要としない姿勢や動作の習慣を持っていたんじゃない?

本 困難な結婚

内田樹さん著「困難な結婚」

よかった。内田さん曰く「結婚は古くからある、人類が生きて行くための制度であるから、誰でも出来るように制度設計されているハズだ」と。さらにご自身の結婚・子育ての経験からの結婚&結婚生活論。

困難な結婚

困難な結婚

 

 内田さんの言葉から逆に考えると、太古の昔からあるものなら「恋愛とか愛とか幸福」といった概念と関係なく存在しているものだって考えたほうが良いのだろう。愛と結婚を一緒くたに考えてもいいけど、制度設計に含まれてないものを期待すると辛くなるんじゃないか?

また、昔から人類が同じように持ってたものを考えると、そばに人がいると暖かいとか、気持ちいいとか、辛いときに助かるとか、そういう感覚に寄り添う制度なんじゃないかと。

内田さんはこの本を読むことで結婚したくなる人が増えて、結婚生活が今よりうまくいくことを願って書いたそうな。

たしかに。