「アロハで猟師、はじめました」近藤康太郎さん著
猟師をやってみたい、という人には参考になる(生き方はそんなに参考にならない)
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猟をするために筆記試験を受けて、精神鑑定を受けて、銃の所持免許をとって、狩猟免許をとって、やっと猟師のスタート地点に立ったと思ったら、そこからが一番辛いらしい
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鴨を散弾銃で撃つぞ!と思っても、新人猟師は一人ではまず鴨がいるところにたどり着けない
何回か何十回か寒いなか出かけていって、やっと群れを見つけても、人間が気づく前に鴨の方が先に気づいて逃げられる
その繰り返しの中で、心折れて猟師になれずに辞めていく人が多いらしい
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そんな中、どうして著者が猟師になれたかと言ったら、良い師匠を見つけ出せたから
前作の「おいしい資本主義」で、稲作を始めたときも、著者はちゃんと師匠や協力してくれる人たちを見つけたことで、物事が回っていっている
今回の猟師になるにも、心の広い師匠に出会えてその指導のもと、鴨猟で毎回上限の5羽まで獲ることができて、鴨肉を周りの人に配ることで新たな繋がりになったり
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もうなんていうか、稲作も猟師も、技術よりも何よりも、知らない他人の懐に入っていって、信頼関係を作るってことが出来ないと何も始まらないことを学べるのが、この本の一番のいいところの気がする
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猟師自体の話としては、やはり生き物を殺す場面というのは、文字で読んでるだけでもなにか厳粛な気持ちにさせられる
著者も書いているが、その現場で可哀想だとか感情が揺れている間は、命に対してちゃんと向き合ってないんだと
まさに自分がそれで、スーパーで買った肉を食べているのに、動物がどこかで殺されていることを想像したことがないのは、何かを避けていると言われてもしょうがない
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希望したってみんなが成れるわけじゃないけれど、猟師になるというのは現代社会で数少ない大人になるためのイニシエーションじゃないかと個人的に思った
猟師になろう