ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 撤退論

「撤退論」内田樹

日本はこれから歴史的にみて、経済成長ではなく「撤退」局面にあるという認識のもとに集められた寄稿集

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そのうちの一つ、イスラム教学者、中田考さんの

1。日本は敗戦処理が終わっていない。旧大日本帝国のときに領地とした国々の人たちの、現在の困っている状況に手を貸すこと

2。そのことが引いては日本の現在の問題の解決につながる

というアイデアがなんか気になった

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他人の話ならその理非がよくわかるので、1について勝手に例を出すと、「アフリカ諸国の国境が直線で区切られていることによる弊害は、誰が解決すべき問題か?」というのがある

これは植民地時代のヨーロッパ諸国が勝手に引いた領土の線の名残りであり、同じ民族がその線で引き裂かれたりして、現在のアフリカの混乱・紛争の原因を作り出してるのは間違いない

そしたら第三者的には「アフリカの『現在の混乱の解決』に、その直線を引いたヨーロッパの国たちが『今』、手を貸すのが当然だろ?」となる

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・・・というわけで「アフリカ直線問題」を日本にも応用すると、「第二次世界大戦のときに、日本が蒔いた問題の種は、やはり今の日本人が解決するしかないだろう」というのは理にかなっている

さて、中田考さんのアイデアの後半の「2。そのことによって、現状の自分たちの問題を解決する」の妥当性は、勉強や仕事で成果をあげる人のやり方と考えれば納得がいく

・自分が失敗した所を見直すことで、自分の考え方のパターンや弱点を知り、新たな問題に当たったときに、少なくとも同じ失敗はしないぶんだけ、解決する可能性が上がると

・・・ま、言うまでもありませんが一応書いてみました

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しかし正直なところを言うと、たんに過去の日本の失敗、しかも自分たちが直接やったわけでもない失敗を、資料で調べたり勉強して理解して反省するのはすごく難しいし、めんどくさい作業だから基本やりたくない

でもそれを、「現在問題を抱えている人たちの課題を解決する手伝いをすることで学ぶ」となれば未来を向いたタスクだから、やりがいもあるし、やる気も出てくる

勉強するんじゃなくて、アウトプットをする、ということかな

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さあて撤退戦、がんばりましょう

 

p.s. ちなみにですが、日本人の集団としての行動パターンがよく描かれてる本に、安冨歩さんの、満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書) があります

狩猟を始めたいメモ

今回は完全に自分ようのメモです

狩猟に興味が出てきて、県の狩猟講習会に出ようという状態です

もし同じような立場の人でしたら、参考になるリンクを

 

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1。大日本猟友会

大日本猟友会

猟師になると、それぞれの免許(銃・罠・網)ごとに、毎年この大日本猟友会に年貢(会費)を納めなければならねぇだ

 

2。環境省の狩猟免許を取るまでの説明

https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort8/hunter/license.html

未読

 

3。鳥獣保護管理事業計画

野生鳥獣の保護管理 / 奈良県

県ごとに毎年作られる、どの動物をどれくらい獲りましょうっていう話だと思う(まだ見てないが、毎年見ないといけないはず)

 

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4。狩猟のpodcast

Apple Podcastの狩猟の時間

この主催者にはとっても申し訳ないのですが、話し方が苦手なので各エピソードごとに貼ってあるリンクを役立たせてもらってます

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5。本「はじめての狩猟」

はじめての狩猟―免許の取り方から痕跡探しまで

これから読むところ

 

6。本「農作物を守る鳥獣対策」

農作物を守る鳥獣害対策: 動物の行動から考える

著者の江口さんは動物行動学者で、目線は農家の話だけど動物の習性など参考になる

猟師は農家の人に頼まれることも出てくるので、関わり所を考えるという意味でも

 

7。漫画「山賊ダイアリー

山賊ダイアリー(1)

「獲った獲物は必ず食べる」をポリシーにした著者の実体験を漫画に

パラコードの工夫した使い方など参考になる・・・ヘビとキジとヌートリアを食べてみたくなった

 

8。漫画「クマ撃ちの女」

クマ撃ちの女 8巻

ひたすら熊だけをハンターとして追う女の話

熊の怖さ、猟友会のしがらみなどを知る・・・

 

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狩猟を始めることができたら、この日記のカテゴリーに「狩猟」を追加しよう

本 13歳からの地政学

「13歳からの地政学」田中孝幸さん著

ある国の「場所性」の視点を教えてもらったのは、目ウロコだった

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たとえば、「中国が南シナ海あたりで軍艦をチラつかせてるニュース」を知ってる人も多いと思うけど、それはなぜなんだろう?

今まで気にしたこともなかったけど、それには深い理由があった

南シナ海には『海溝』があって、そこを中国は自分のものにしたいから」

・・・これでこの話の全体像が掴めた人はすごい!

「なぜ海溝を自分のものにしたい?」は後半につづく

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この話を考えるには核兵器からスタートしなくてはいけない

核兵器を持っている国というのは、核の置き場というものを考える必要がある

例えば、アメリカやロシアは核兵器を具体的にどこに置いてあると思いますか?

・・・僕はてっきり、テキサスやアリゾナの人が住まないだだっ広い場所の地下にあると思ってました

違うんです

陸地では、人工衛星やらなんやらで発見されて戦争の時に最初に狙われてしまう

だから核兵器原子力潜水艦に積んであって、それは海溝の奥深いところを常に移動していて、場所が分からないようにしているのだと

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・・・原子力潜水艦って、単に原子力で動いているからついた名前だと思ってた自分の無知さよ(物理学科出身なのに!)

え、でも何万発も核兵器があったら、それを全部積む潜水艦の数ってハンパなくない?

操舵する兵士の数も必要だし、軍事費がうなぎのぼりになりそう

 <<閑話休題>>

話を戻すと、核兵器を維持するためには原子力潜水艦が必要で、さらにそれが隠れるための浅瀬ではなくて、数千メートル級の海溝が必要になると

さらに中国の話に戻すと、東シナ海のあたりは大陸棚(数百メートルくらい)で、原子力潜水艦が隠れることができない

だから、数千メートル級の海溝を持つ南シナ海が欲しい

そのために南シナ海に人工島を無理やり作ってそこを排他的水域にすることを、隣国と火種になるのも辞さずに強行してると

・・・なるほど話が繋がった

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この本は、同じように「場所が物事を決めてる話」がたくさんあって面白いです

やっぱりネットじゃなくて足を使ってその場にいくことは、いつまでたっても大事だな

本 水の未来

「水の未来」フレッド・ピアスさん著

 

これからの世界は水不足になっていくのだろうか?

 

水の豊富な日本にいると想像しにくいのだが、

世界の多くの地域で、「緑の革命*」以後、・・・中略・・・川の水が無くなったり足りなくなったりしたので、地下に何千年、何万年かけて溜まった水を使って農業をしている

(*緑の革命は1960年代の、大量の水と肥料を使った収穫率の高い農業技術の革新のことで、そのおかげで飢餓が減ったりしたのだが別の問題も引き起こした)

つまりは

年間で地下水を汲み上げて使う量  >>>  年間で地下水が自然に溜まる量

の地域が出現しており、数十年以内に農業が出来なくなるということ

そして多くの地域がそのことを分かってても止められてないこと

また地下水の汚染問題があること(川の水のほうが汚染は比較的少ない)

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この水利の問題と、そこから派生した問題から3つの視点で考えることになった

一つ目は、身近な個人レベルの話として発展途上国へいく時

例えばインドやバングラデシュでは、川の水が使えなくなり、地下水を農業や生活の水として使い始めたのだが、その一部(といっても何百万・何千万人規模)では、ヒ素やフッ素が井戸水に基準の何百倍といったレベルで含まれていて、それを飲んだ人たちが手足が曲がったり、皮膚ガンや肝臓ガンになっているという

(本の取材時が2005年より前あたりの話だが、現状どうなのかは分からない)

もしこれから行くことがあるなら、そこに住んでいる人たちに申し訳なくても、以下のような水質チェックの道具を持って行きたい

日本のamazonではフッ素や鉛のチェックができるものが数千円である

なぜか日本のamazonでは、ヒ素に対する試験薬みたいなのが売ってない

理由があるのだろうか?

アメリカのamazon.comにはあるので一応リンクを貼っておく

Arsenicというのがヒ素のこと

www.amazon.com

 

2つ目は、国家間レベルの「仮想水」の行き来という話

それを説明する

例えば、牛乳を1L作るための牛に食べさせる草には水が2000L必要だそうな

だからもし牛乳1Lを輸入したら、仮想的に水2000Lを輸入したと考えてもよかろうと

これが仮想的に水が国を超えて行き来した量として考える「仮想水」というアイデア

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そうなると、現在の炭素の排出権取引と同じで、今後、仮想水権取引というのが行われるようになるかもしれない

日本は大量の穀物や野菜の輸入国だから、「仮想水」の大量輸入国として新たな関税なり何なりを払う必要が出てくるかもしれない

水が世界で足りなくなって穀物や野菜の国際的値段が上がるのと同時に、仮想水の税金がかかるようになったら・・・

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個人で何かできることがあるとすれば、「雨水」で育てる大きめの家庭菜園を作っておくこと

都市に住んでると難しいので、仮想水問題で田舎に住む必然性が出てくるかもしれない

過疎化やコンパクト・シティという、都市に集中して住まわせることで、インフラ・コストを下げようとするいまの流れと、どう折り合いをつけていくことになるか

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3つ目は、日本国内だが個人では如何ともしがたい”可能性”の話

日本の土地や山が海外資本に買われて、その川になる前の湧き水や、地下水脈から水を輸出され(てい)る可能性はどうなんだろうと

今でもなんらかの法律の規制もあるかもしれんのだけど、なんせ国民全体として「水に対する世界レベルの渇望」を知らない

もし日本から水が制限なく輸出されるようになったら、日本もこの本に書かれてる多くの地域と同じ争いに巻き込まれる

(例えば、イスラエルが川の水を国内用にせき止めたために、ヨルダンやパレスチナ地区には水が流れなくなった、の国内版とか)

他にも穀物や野菜の値段も高騰するし、水道水の値段もどうなるやら

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個人的には水の問題を今後も追っていくことと、雨水を上手にためて生活水にしたり家庭菜園をする方法を学ぼうと思う

方法自体は水が溜まってるところから自分の農地に引き込むだけ、などけっこう原始的だったりもするのだが、一番環境に負荷がかからず、仮想水問題も地下水問題も水質問題にもひっかからない

ご一緒に。

本 成功するシステム開発は裁判に学べ!

「成功するシステム開発は裁判に学べ!」細川義洋さん著

 

個人的にはとても面白かったが、業務システムを開発するベンダーの社員か、発注会社の担当者にならないと関係ない本なので、面白い部分を紹介

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プログラミングを含むシステムの納入は、普通の商品の納入と全く違うところが一つあって、それは「必ずミス(バグ)が含まれているものを完成品として納入する」ということ

これは裁判所も認めていて、判例でも「システムを作るというのはミスが必ず含まれるもの」と捉えて、それを認めた上で、「どの程度のミスを瑕疵とするか」というレベルで判断が下されるのだと

これは、違う業界の人からしたら「え!?ありえなくない!!」と思うに決まっているけれど、それが実態として世の中が回っている

それは別にベンダーがひどいとかいう話ではなくて、誰がやっても同じになるし、個人的には「システムというものが人間にそもそも合ってない」んだと思ってる

プログラマーと言われる人種が共通して、他の業種よりも人間の深みに触れている部分があるとしたら、それは「絶対自分はミスをする」ということを海より深く知っていること

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余談だけど最近法律が変わって、「ベンダーは納入したシステムのエラーに無期限に対応する義務を背負う」というルールができたので、日本では長期的に見て、ベンダー業界はなり手がなくなっていくと思う

ベンダーで働いてない立場なんだけど、この法律がOKなら「何かの法律を作ったことで社会にマイナスが起こったら、それに関わった政治家と官僚は一生無料で償う」という法律があってもいいと思う

本の内容はこれくらいにして、この本の存在が面白いなと思ったのが、

ある業界を理解するのに「その業界が裁判でどういう問題を争ってきたか?」の視点で見ると新しいところにたどり着くんじゃないかと

裁判になるというのはその仕事の弱い環の部分であり、割り切れない部分であり、理不尽さであり、人間的な部分なんじゃないかと

日常の仕事の視点で見るなら「その業界における仕事のしわ寄せ」がそれであり

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だから、「業界ごとに裁判をまとめた本シリーズ」があるといいんじゃないかと

就職先選びに「そのしわ寄せ部分が自分に回ってきてもOKと思える業界が、自分に向いた業界」である、という判断がくだせるとか

また仕事をしてる中で「何かこの仕事おかしくない?」と思ったときに、この「業界ごとの裁判をまとめた本シリーズ」を読めば、自分がどういう位置にいるのかすぐ分かる

自分の感覚が間違っているのか、業界がおかしいのか

判例を知って、裁判に巻き込まれる前に判断するのが一番楽だと思う

音声-乗り換え案内アプリ(関西)を作りました

関西の「音声乗り換え案内アプリ」ができました

ものはこちら 音声案内 KiNAi

(2週間で終わると思ってたのが、2ヶ月半かっかた見通しの甘さよ・・・)

 

「乗り換え駅」と「所要時間」を音声で教えてくれます

なんだったら、iPhoneだと入力も音声でできるし!

できないこと・・・「時刻表」や「運賃」は分かりません

(時刻表はライセンス料がかかるのよ)

 

こんな感じに動きます


www.youtube.com

 

駅の範囲は「大阪、奈良、京都と兵庫の南方面と、和歌山と滋賀の一部」(畿内)です

字が見えにくい人小さいボタンの操作がしにくい人、のお役に立てるかもしれません

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時刻表がないということで、一つ注意点としては、同じ路線で行き先が変わるような電車に関しては、代表的な電車のみを案内しているので、乗り換えの車内アナウンスなども併用で!

もっかい案内しときます

こちら >> 音声案内 KiNAi

 

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余談ですが、この乗り換え案内は、ダイクストラ法(dijksttra)という

「無数にある点 ( 今回なら駅 ) を星座のようにつないで、最短距離を求める」

数学の手法を使っており、たまに「何これ?」的な乗り換え案内もでますがご容赦!

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間違いやエラーがあると思うので、これはさすがに!というのはご連絡いただけると幸いです

例えば、十三駅で強制的に乗り換えが発生する場合を確認しています

 

ではでは、良い電車ライフを

漫画 綿谷さんの友だち

「綿谷さんの友だち」大島千春さん著

主人公の綿谷さんは言葉の裏の意味や、空気を読ま(め)ない高校3年生

高2まではきっと無視やいじめを受けてきた彼女だが、山岸さんという同級生が隣の席になったことで世界が変わっていく

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山岸さんは、綿谷さんが自分と違う価値観なり感じ方をしていることを、(多くの同級生は綿谷さんを異物として扱うなか)当然のこととして受けとる

そして大事なのは、山岸さんが「綿谷さんにとって謎でしかない、周りの人と綿谷さんとの考え方や感じ方の違い」を説明してくれることで、綿谷さんが「周りの人と関わる術を少しずつ身につけていける」ようになったこと

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綿谷さんにとって山岸さんという、おそらく学校で初めての安全地帯ができ、そして綿谷さんが山岸さんと話すのを見ることで、クラスメイトも綿谷さんのことを理解するチャンスが生まれ、少しずつ綿谷さんと関わるクラスメイトができてくる

同時に、クラスメイトたちの世界も変化していく

綿谷さんより自由に振舞っているように見えたクラスメイトたちも、空気を読んだり、言葉の裏の意味を考えてばかりで動きが取れなくなり、別の生きにくさを抱えていた

綿谷さんはクラスメイトたちがそれぞれに持っている心の壁に、ストレートにぶつかっていく

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多くの場合その行為は、不躾だったりタイミングを得なかったりで、綿谷さんが嫌われるだけに終わることのほうが多いんだろうけど、そこは漫画で、クラスメイトたちは実直な綿谷さんに触れることで、自分の壁を意識させられて、その壁に囲まれた世界から出るほうを選ぶ

この漫画を俯瞰してみるなら逆説的だけども、周りと違うタイプの綿谷さんがいることで、クラスメイトひとりひとりが生きやすくなっていく

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最後に、綿谷さんのこの話は、日本ならではの話かもしれない

彼女は一般的に言うなら発達障害として呼ばれるかもしれないのだけど、この言葉は注意が必要で、その社会において生きていくのが難しければ、そう呼ばれるということ

だから個人の違いをもっと当然として生きる欧米社会では、綿谷さんのあり方は単なる個性として扱われるかだけもしれない

そして日本の綿谷さんに話に戻しても、山岸さんのような最初の一人がいて、クラスメイトと楽しくやっていけているようになったら、もう発達障害とは呼ばれなくなるということ

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大好きな漫画になった