ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 成功するシステム開発は裁判に学べ!

「成功するシステム開発は裁判に学べ!」細川義洋さん著

 

個人的にはとても面白かったが、業務システムを開発するベンダーの社員か、発注会社の担当者にならないと関係ない本なので、面白い部分を紹介

* * *

プログラミングを含むシステムの納入は、普通の商品の納入と全く違うところが一つあって、それは「必ずミス(バグ)が含まれているものを完成品として納入する」ということ

これは裁判所も認めていて、判例でも「システムを作るというのはミスが必ず含まれるもの」と捉えて、それを認めた上で、「どの程度のミスを瑕疵とするか」というレベルで判断が下されるのだと

これは、違う業界の人からしたら「え!?ありえなくない!!」と思うに決まっているけれど、それが実態として世の中が回っている

それは別にベンダーがひどいとかいう話ではなくて、誰がやっても同じになるし、個人的には「システムというものが人間にそもそも合ってない」んだと思ってる

プログラマーと言われる人種が共通して、他の業種よりも人間の深みに触れている部分があるとしたら、それは「絶対自分はミスをする」ということを海より深く知っていること

* * *

余談だけど最近法律が変わって、「ベンダーは納入したシステムのエラーに無期限に対応する義務を背負う」というルールができたので、日本では長期的に見て、ベンダー業界はなり手がなくなっていくと思う

ベンダーで働いてない立場なんだけど、この法律がOKなら「何かの法律を作ったことで社会にマイナスが起こったら、それに関わった政治家と官僚は一生無料で償う」という法律があってもいいと思う

本の内容はこれくらいにして、この本の存在が面白いなと思ったのが、

ある業界を理解するのに「その業界が裁判でどういう問題を争ってきたか?」の視点で見ると新しいところにたどり着くんじゃないかと

裁判になるというのはその仕事の弱い環の部分であり、割り切れない部分であり、理不尽さであり、人間的な部分なんじゃないかと

日常の仕事の視点で見るなら「その業界における仕事のしわ寄せ」がそれであり

* * *

だから、「業界ごとに裁判をまとめた本シリーズ」があるといいんじゃないかと

就職先選びに「そのしわ寄せ部分が自分に回ってきてもOKと思える業界が、自分に向いた業界」である、という判断がくだせるとか

また仕事をしてる中で「何かこの仕事おかしくない?」と思ったときに、この「業界ごとの裁判をまとめた本シリーズ」を読めば、自分がどういう位置にいるのかすぐ分かる

自分の感覚が間違っているのか、業界がおかしいのか

判例を知って、裁判に巻き込まれる前に判断するのが一番楽だと思う