ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 ゼロからトースターを作ってみた

「ゼロからトースターを作ってみた」トーマス・トウェイツさん著

 

3.94ポンド(500円)で買えるトースターを自分で作ることが、どのくらい大変か?

・・・近いことを考えた人はそれなりにいると思うけど、やってしまう人は素敵だ

親族にいると大変だけど友達にはなりたい(笑)

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まず思いつくのは鉄をどうやって調達するの?と

鉄鉱石って、どれ?どこに? 溶鉱炉ってどうするの? と疑問はいくつも湧き上がってくるが、ひとつひとつ遠征したり実験したりで著者はクリアしていく

途中で何度もいろんな大学の先生に相談するシーンがあるのだけど、真剣に応えてくれるのはイギリスだから??

ちなみに溶鉱炉の解決策は、日本の多くの家庭にもあるもので、つまり家の中で出来てしまう!!

個人的にガラス細工で著者とほぼ同じことをやったことがあって、家の中に数百度が存在することの不思議さと怖さを感じたことがあるけど、 隣の家でやられてたらちょっと嫌(笑)

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で、著者が作りたのはやすっちいトースターなので、筐体はプラスチックで出来ている

プラスチックって安物ってイメージあって、例えば金属とか木とかに比べて自分の中で評価が低かったのだけど、作るとなると別らしい

要するに、生成がおそろしく難しい

その方法を具体的に知らなくても、「なぜプラスチックは高度成長以降に出てきたのか?」 を考えれば難しいことが想像できるかもしれない

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ざっくり理解しておくといつか役に立つかもしれないのが、「人類の歴史の順で出てきた古いやつほど、個人で作るのが簡単な技術や物質だったりする」と

例えば青銅器は鉄系で一番簡単だと

・・・言われてみればなるほど

ちょっと関係ないように思えるけど、最近(2021年)プラスチック・ゴミが環境汚染だと言われていることと、それが難しい技術の産物であることは関係しているんだろうか?

生成過程が化学的に複雑だと分解過程も複雑(時間がかる)とか?

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本の表紙にあるように、最終的に著者はトースターを作りあげる

そして市販の3.94ポンドはおかしいという結論を出す

あまりまとめられてないが「大量生産すれば安くなるもんだよ」の外側にあるものの話が少しだけ出ている

その話がもしかしたらこの本の裏テーマかもしれない

読んで外側に興味を感じたら次に、斎藤幸平さんの「人新世の「資本論」 (集英社新書)」を読むといいかもしれない

外側の話がより仕組みとして書いてある

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最近、文明を起こし直す漫画だとか本だとか、着の身着のままで自然で生きる訓練だとか、火を起こす技術だとか、なにか文明全体を見直す流行りがある気がしている

もしかしたらそれは全部、資本主義の外側を具体的に見ようとする行為が、いろいろな形で現れだしているのかもしれない