ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 バズる文章教室

「バズる文章教室」三宅香帆さん著

有名作家・エッセイストの文章の「表現技術」への偏愛を分けてくれる本

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(個人的に)以前、セザンヌとかピカソとかの有名な画家の絵は、「一目でその人の作品だと分かるのはなぜだろう?」と考えたことがあった

・・・たどり着いた答えは、考えの順序が逆で「いい絵を描いたことだけじゃなくて、絵の描き方に関して(一目でその人と分かるような)独創的な手法を作り出した人」だけが、「有名な画家」として残っているのだと

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文章に関してもおそらく同じことが言えて、何をテーマに書いてるかじゃなくて、「どう書くかの」の「表現技術の何かの分野」で傑出している人が、有名な書き手として残っているのだろう

ただ、文章においては一人の作家にしぼった表現技術の面白さの分析はあっても、文章界全体を見渡すような「表現技術の腑分け」は(絵ほどは)なされていなかった

そんな中、この本の作者は「文章表現技術ソムリエ」みたいな役割を自然と引き受けるようになったんだろう

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

 

文中の例をあげるなら、林真理子の「恋愛の噂をする人と、される人」の話が好き

噂される人の受け答えが「ふっふっふ」と表現されていて、一言で雰囲気が伝わる

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こんな具体例で埋め尽くされた本なんだけど、何より感心するのは、やはり作者の「受け手としての力」だと思う

有名作家が目に止めて欲しいと思ったところに、素直に目がいっている

カタカナで強調したところ、リズムに乗って読んで欲しいところ、スピード感が変わったところなどなどを、いちいち受け取っている作者のキャパシティというか愛がすごい

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本の体裁としては、文章の表現技術の存在を知って、SNSやブログを書くときに読者のみなさんもちょっと真似て「いいね」を多めにもらってくださいねーってなっている

それもいいんだけど、まずは先達の人たちの技術をじっくり味わって、受け手として楽しんでくださいね!ってのが本来のゴールではないかと思う

いやー偏愛に触れるっていいね