ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

本 『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』 渡邊格さん著。

いいタイトルを考えたなと思う。腐って土に還っていくモノゴトを中心に据えて経済を回すって発想がいい。人間も最後は腐って土に還る(暇がないのが日本だけど)わけだし、このほうが人間の生きるリズムに合うに決まってる。

著者曰く、天然麹菌で穀物を発酵させようとするんだけど(世界初!)、有機栽培のものでさえ相性が合わない。そこに「奇跡のリンゴ」のように、無肥料・無農薬の自然栽培の穀物を使ったら、掛け算の成果が生まれたという。

その様を著者は、天然の麹菌が素材となる穀物の生命力の強さを推し量り、無駄に栄養を付けさせられた ” 弱い ” 有機栽培のものはすぐに土に還すべきだと「麹菌」が判断して腐敗させ、生存競争に勝ち抜いた ” 強い ” 自然栽培の穀物だけ発酵させた、という。

菌ファーストな人生を本気で送ってないと見つけられない視点だと思う。

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

 

本の半分は著者が送ってきた人生の話で、喩えていうなら「いろんな菌を持つ天然酵母のような著者」が、その力を一番発揮できるはずの ” 自然栽培 ” に出会えず、まさに腐ったりしていた話。ブラックな会社で働いたり、マルクスを読んだり、搾取された環境で働いたり。

著者の人生の展開と、菌との付き合い方が変わっていく話は相似形のように読める。そう考えると自分が生きて働いている環境の価値観が、そのまま自分の考え方を作ってしまうんだろうな。

そして、腐る経済を回し始めた著者のもとには、志を同じくする人たちや、パンを喜んで楽しみにしてくれるお客さんがきている。お店を始めてからたった(失礼!)5年で。(・・・同じ5年をちょうどいまの仕事場で過ごしてきて、その成し遂げたものの彼我の差に愕然としている個人的感想はおいといて)

* * *

腐る経済のなかで生きていきたいと思う。手始めに菌ファーストを日常で考えるなら、まずは菌が一番多く住む ” 腸ファースト ” が 一番近いんじゃないだろうか。

物欲よりも、腸の居心地が一番良い状態を保つことを心がける。気持ち穏やかに暮らし、適度な運動、十分な睡眠、八分目のごはん、多様な食材、親しい人たちとのご飯などなど。

あとは仕事をどう腐る経済に落とし込んでいくか。AIを触ってる身としては、やはりそれを個体に落とし込み、寿命をあえて付与するなんてことかしら。