「山と獣と肉と皮」繁延あづささん著
猟師ではない著者が、引越し先の長崎のご近所にいた派手なおじさん(あとで猟師と分かる)に挨拶したことから始まった混迷の旅
著者はシシ肉を毎週のようにもらようになり、猟に同行し、狩猟の瞬間や解体、腐敗、皮鞣しなどまで自分の足で追っていく
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いつしか肉というのは、スーパーで売っている無名の「肉」じゃなくて、激しい命を持って野山を走り回って、最後の最後まで生きていた臭いもすごい唯一無二の「個を持つ生命の一部」に変わっていく
著者の想いの変遷が話の縦軸としてあり、それはすごいエッセイなのだが、横軸としての2人の猟師さんの話が個人的には面白かった
最初に出てくる派手なおじさんは、害獣駆除メンバーでもあるので一年を通して猟ができて、二日に1匹くらい仕留めて、周りの人たちに肉を配っているという
山から恵みとして与えられたものを、たまたま自分が頂いたので、見返りを考えずに周りの人にその恩恵を贈っていく、という感じがすごく素敵だ
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もう1人の猟師は、犬に山を駆け巡らせてイノシシを発見し、銃で仕留めるスタイル
犬との無言の「狩猟仲間としての信頼関係」が構築されていて、種を超えてお互いにリスペクトしあってる様子がなんだか不思議だ
youtubeでも観れる(狩猟場面が大丈夫な人だけみてください)
個人的な話で、去年狩猟免許を取った人に出会った
「免許取っても、1人で山に入ったって(技術も経験もないし)全然取れないから」
と経験を語ってくれて、先輩グループを探して属して、狩猟LINEグループを作っている人だった
なるほどなーと思う
本に出てくる猟師の2人もその先達猟師から学んでるし、犬をパートナーにしたり、基本的には猟は仲間とやるもんなんだろうな
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そのこともあって、著者は僕から言わせると「狩猟運」を持っている
気のいい&腕のいい猟師さんが、近くに住んでて出会える偶然なんてすごすぎる
狩猟を目指して免許取った人の多くが、著者のような出会いに恵まれず、多くが一年目で狩猟を辞めてしまうから
著者がそういう運を持っていたからそ生まれた本であると思う
狩猟をするようになったら、何度か読み返してみたい