女の自立と男の自立について書かれた本の感想。
「燃える波」村山由佳さん著
最近読んだ村山さんの作品で久しぶりに読後感がハッピーだった。間違ってない選択肢をきちんと主人公たちが選び続けて、ある境地にたどり着いた感。
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結婚して年月を過ごしてきた女性が、夫のために無意識のうちに自分の行動や感情を制限し、辛さをないものとしてきたこと。その見えない牢獄に気づき、自分の人生をまっとうに取り戻そうとするときに立ちはだかるものたち。
そのことを作者は最近の作品で繰り返し書いている。ラヴィアンローズ、嘘 Love Lies、ミルク・アンド・ハニーは、全部同じ構図で、なんとなく作者自身がそれを乗り越えたかったんじゃないかと勝手に思ってしまう。
本の中に、自分の「性のプライド」が打ち砕かれた時、それを取り戻してくれるのは、同じ「性」によるものしかないという話があり、なんだか納得してしまう。
傷ついた主人公に魅力的な男性が登場して、求めてくれるのは小説ならではであるけど(笑)
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同時に、男側としては、捨ててるつもりで捨てられた甘いぼっちゃん的な、(主人公の)一人目の男のイタさがよくわかる。二人目の男は自立していて、野性的でストレートで、女を大切にする。
どちらの男が正しいというより、主人公が若い時に出会ったときには、自分が本当に何を欲しているか分からなかっただけの話かもしれない。
あっ違うか。自分と相手の立場を置き換えたときにも成り立つ関係性を築けているか、絶えず自己チェックできる、自立があるかどうかが一つのポイントなんだ。
そしてこればっかりは時間が経つとある種どうしようもないんだろうけど、今、パートナーである女性の「性」を満たしてくれる存在なのかどうかと。
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その主人公たちの葛藤に一つの形を与えられた気がするのが、今回の作品。願わくばこの葛藤への回答が一つ与えられたことで、おいしいコーヒーのいれ方の続きを書く気にになってくれるとさらに嬉しい!!