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「エッジエフェクト」福岡伸一さん対談集

柄谷行人さんとの対談では、「なにか大事な決断をするときに、死者とまだ生まれてない未来の人の言葉に耳を傾けること」 という言葉があった。内田樹さんも同じことを言う。死者と生来者(勝手に造語)の声に耳を済ますこと。

「自分の殻」というエッジを壊せということでもあり、「自分がいる流れ」を見よということかもしれない。敬虔な一神教徒の人は、同じ物事を神の視点からも常に見ているかもしれない。外部の視点を持ちにくい無宗教の人間としてはとても大事な方法論だと思う。

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臓器移植の話になる。臓器の区分、たとえば”心臓”というのは人間が作った言葉であり、概念であり、自然が作り出した区分けではない。だからそれだけを取り出して移植するのは、そもそも無理筋だと思う。

西洋医学(哲学)のパーツに分けて考える還元主義からすると当然のように思ってしまう臓器移植だけど、自然を単に還元主義的に見て理解する考え方に過ぎないことを忘れて、自然が還元主義的にできていると考えるのは違うと思う。

そっか、概念のエッジを疑えということか。

ただ、生きるということに対して他人を害しない限り、臓器移植を含めて何をやってもいいとも個人的には思う。

エッジエフェクト(界面作用) 福岡伸一対談集

エッジエフェクト(界面作用) 福岡伸一対談集

 

 森村泰昌さんとの対談では、「美」という評価軸をもっと大事にしなければならないという話になった。「正しいこと」「善であること」が公的な評価軸になっていることに対して、徹底的に個人的な感覚である「美」の評価軸が埋もれてしまっていると。

「私はそれを美しいからいいと思う」をもっと復活させないと息苦しい。

個人的には「エビデンスは?」という言葉が浅過ぎていやなんだけど、今後AIが発達したらエビデンスがあるような仕事は全部AIの仕事になるから、個人的な感覚で、還元にしにくい「美」の評価軸による仕事、というのが残るんじゃないかと期待している。

価値観のエッジを考えろと。

自分で無意識に作っているエッジを壊す作業をするときに、福岡さんの本はとてもいい。