ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 吹上奇譚 第二話 どんぶり

「吹上奇譚 第二話 どんぶり」吉本ばななさん著

この小説は生き生きしている

今までの小説も好きだったけど、言うなればそれは、あの世とこの世みたいな二つの世界が別れていたがゆえに、ある種の秩序を保った静謐な感じを湛えていた

この本では作者がまた一つ違う扉を開けて、普段の世界と普段ではない世界とが風通しよく繋がった感じがする

今を生きることへの強い肯定が、今までと違う彩りと自由をこの本に与えているのかもしれない

吹上奇譚 第二話 どんぶり

吹上奇譚 第二話 どんぶり

 

多くの小説や物語は、たいてい一つだけ大きなウソをついて、あとは現実と同じように書くことでリアリティを持たせるのが普通だと思うんだけど、この本は”ウソ”をたくさんついているのに、とても自然に話が展開していく

最初からそこに全てがあったかのように、登場人物と環境が有機的につながっていく

感想を書いてて、そもそも登場人物と環境って分ける発想自体が一つの見方にすぎないことに気づいた

逆に、環境という言葉で切り分けることが、生き生きを失わせる方法なのかもしれない

* * *

主人公ミミは、目の前で起きていることをゆっくり肯定していく

自分の思う過去からくる記憶は大切にするけれど、今、現にそこにあるモノコト自体の大事さほどは、たいしたことがない

その今この瞬間に存在するものを祝福することが、周りの存在を癒していく

 

ばななさんの森のあり方は、こんな感じなのかもしれない

本 Python データサイエンス ハンドブック

Python データサイエンス ハンドブック」

画像を行列処理する場合には、この本がなきゃ話になんねーよってくらい大事な本。

* * *

たとえば、行列の各要素に何かを足すときに、for ループを回すことなく、

 >>> myArray = np.array([1,2,3,4])

 >>> myArray + 5 

 >>> [6,7,8,9]

みたいなことが出来ることを知れる価値。

* * *

Numpy, Pandas, Matplotlib, scikit-learnあたりの、ハイレベルな処理がたくさん載っている(まだNumpyのところまでしか読んでない)。

もちろんネットにも情報はあるけれど、そもそもライブラリを使ってどんな方法があるのか自体を最初は知らないわけだから、教科書的な意味でもこの本があると便利。

時間をお金で買うと思えば全然高くない。初級以降のPython本の中で一番おすすめ。 

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個人的には、画像をPillowで処理してて、最初はpythonネイティブの配列で処理してたんだけど、Numpyを使い出したらもう戻れない。処理速度が100倍単位で違う。

余分な話が一切ないのがオライリーの訳本系の良い所であり、無味乾燥な所でもある。なんにせよ、Pythonをある程度使いたいなら持つしかない。

いつ買うかだけの違いでしかない。

本 他人だったのに。

「他人だったのに。」糸井重里さん著

糸井さんは、どうしてこんなことを思いつくんだろう?という、皆が思う思いを今回もまた深く味わった。

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殺し屋は「代理人」だからうまくいくって、言われるとそうだよなーと思う。関係者だと感情が邪魔して上手くいかないとも。

・・・他人の恋愛の成否はよく分かるが自分の恋愛は客観視できない、ってレベルでならすごく分かる(笑)

* * *

ということは自分が何かの「代理人」を務めるときは、極力感情を捨てないとダメってことなんだ。「家売るオンナの逆襲」の北川景子扮する不動産屋、三軒家万智のように。逆に感情を適切に抑えられるなら、自分で自分の代理人がこなせるんだろう。

* * *

もしかしたら人類史において、感情の発達と、分業(代理人の登場)というのは同時代的に起こったことなのかもしれない。

他人だったのに。

他人だったのに。

 

 * * *

糸井さんは今、なんの代理人を務めているんだろう。言葉の代理人という気がするが、そうするといわゆる詩人と何が違うんだろう。半分くらい詩人の気もする。

ちなみに養老孟司さんは、時代の代理人の気がする。今がどんな時代なのかを損得抜きで伝えられる稀有な存在。たまにこちらの成熟度が足りなくて理解不能

しかし、極力感情を捨てた機能的存在(=代理人)って、AIそのものやん。みんな、なんらかの「代理人」だから役割があって生きていられるのに、AIが代理人をやりだしたら(もう始まってるけど)、あとには何が残るんだろう。

人間の「代理人」?

本 しょぼい起業で生きていく

「しょぼい起業で生きていく」えらいてんちょうさん著

 これは、” 現代版百姓のススメ ”だと思う。 

筆者曰く、「しょぼい起業」とは、「今ある、あなたの生活」をお金をかせぐ仕組みにしていき、草むしりのお手伝いとか、”存在することが仕事”みたいなことから始めて、目の前に現れたできそうなことをともかく始めていくことだと。

図にするとこんな立ち位置。
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そして「生活自体を稼ぐ仕組みに組み込む」とはどういうことか?がこの本で説明されている。一例をあげるなら、手元にある資本は全部稼働させ続けろと。

しょぼい起業で生きていく

しょぼい起業で生きていく

 

 また別な視点でいうと、「しょぼい起業」のメリットとデメリットはこんな感じだと思う。自分のペースで働けるのがメリットで、でも起業ってどうするの?っていう知らないことに対する不安が最大のデメリット。

だからその「知らない」を「知ってる」に変える、もしくは「知ってる」につながる道があることだけはこの本が教えてくれる。

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思うに、この本は時代を先取りした本という扱いになっていくだろうと。AIが発達して調整仕事が減れば、何かのアウトプットを生み出す仕組み(会社とか)に必要な人間の数が減る。会社員が減る。激減する。

つまりこの「しょぼい起業」的生き方がノーマルになっていく。今はまだそれが珍しいからこうやって本になるわけで。百姓ばっかりの時代に「百姓の生き方」なんて本がなかったように。

あとは百姓になる覚悟だけ。

本 空をゆく巨人

 「空をゆく巨人」 川内有緒さん著

人が人とつながることで、新しいものごとがどんどん生み出されていく、大きな物語を読んだ気がする。

この本には二人の巨人が出てくる。アーテイストの蔡國強さんと協力者の志賀さん。どちらも個人としても面白いのだけど、二人が組み合わさることの面白さがやはり一番すごいのかもしれない。

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蔡さんはアートという枠組みで、0から1を作り出す視点や方向性を打ち出す。それを志賀さんをはじめとする協力者たちが、1から10や100にしていく。協力と言っても、それ自体が創造的だったり初めてのことばかりで、それぞれ対等な別々の立場から関わってプロジェクトが花開き大きなものになっていく。

友情ももちろんあるだろうけど、それよりも世界に関われる面白そうな手段がそこにあって、それぞれの役割を果たして関われること自体が一番嬉しいんじゃないかと思う。学校の文化祭を作る楽しさを、世界を変える手段としてスケールアップさせたものがイメージに近い。

空をゆく巨人 (単行本)

空をゆく巨人 (単行本)

 

志賀さんは、南極探検にいった大場さんの冒険の生死の鍵を握る協力者でもあった。南極で死にかけた大場さんが

「あのとき、人間に必要なのは希望と夢だと気がつきました」(文中より)

という言葉を残している。この言葉はのちに東日本大震災後の志賀さんの行動の指針になっていく。それがいわき万本桜プロジェクトになっていく。

昔からそうだったんだろうけど、もう志賀さんは自分だけの人生を生きていない。自分の人生を超えた時間の歩みの中で、生み出されるモノにその身を任せている。人脈や行動力という意味で巨人だった人が、時間を超えた大きさでも巨人になっている。

稀に見る面白いノンフィクション。

本 新しい分かり方

 「新しい分かり方」佐藤雅彦さん著

モノゴトの ” 分かり方 ” に今までと違った分かり方がある、というのが新鮮。もしくは、自分が ” どう分かっている ” のかを考えさせられる。

正直、何度も読み直さないと今までの理解の範囲で、 ” 分かったふり ” をしてしまう。

新しい分かり方

新しい分かり方

 

 

印象に残ったのがこれ(模写した)

どちらかの道を通ったことは分かる。でもどちらの道かは分からない。前と後があって、その途中がよく分からないけど、全体として ” 分かった ” 感じがする。

 

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この手の理解の仕方を最近よくするようになったなと思う。前と後を「言葉」、途中を「行動」と置き換えてもいい。

実際の行動はよく分からないけど、言葉として前と後の整合性は取れている。

それで ” 良し ” としてしまう心のあり方。

自分が、他人がどんな時にこの理解の仕方をしてるのだろうか。

 

本 精神科医が教える 良質読書

精神科医が教える良質読書」名越康文さん著

空海が日本という概念を発明したのではないか?」というアイデアを思いついた著者。そのアイデアを考えていくために、関係する本をどんどん読んでいく「本を思考の道具として使う具体例」が最終的に一番参考になると思う。

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まずは空海自身を知りたいから「三教指帰」とか空海の著作を読むのだけど、難しい。それらは、山のてっぺんのような「頂き読書」として扱い常に本を携帯して、暇な時間があれば2、3行づつでも読み進める。

また空海の思想と量子力学につながりを感じた著者は、量子力学の入門書を読み漁る。10冊前後読むと量子力学が(数学的な理解ではないが)だいたい何がなんであるかぐらいは分かってくると。たぶんこのアイデアがいつか空海と繋がるのだろう。

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そして最初のアイデアの話に戻ると、それまであった「ヤマト」に、空海真言密教の思想を取り入れて初めて、「日本」という概念ができたのではないかと著者は考えている。そのために著者はヤマトに関する本が読みたくなり、2-3世紀のヤマト勃興期から、空海が生まれる9世紀までの歴史の本を調べるようになる。 

精神科医が教える 良質読書

精神科医が教える 良質読書

 

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本嫌いだけど、本を使う価値は広く伝えたい著者。

精神科医を前面に出すのは、「本も使って自分で学び続ける」ことが、それぞれの人の心の平安につながる最短の道だと考えているからだろう。