ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 コンテンツの秘密

本「コンテンツの秘密」川上量生さん著。

ドワンゴ会長の川上さんが、2年間ジブリ鈴木敏夫さんのカバン持ちをしながら考えたこと。から考えたことを。

人間が良いと思うものは脳内で単純化されて、特徴的な姿になっているハズという著者の結論。そしてそれはAI(機械学習)でコンピューターが認識する”特徴”と似ているものじゃないかと。  

これは一時有名になった、googleのAIが何千万枚もの写真(を011100101…化したもの)の特徴を見つけ出し、それを画像化したもの。

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これを見たときに人間は ” ネコ ” だと思う。 それもけっこう ” ネコらしいネコ ” だと思うんじゃないだろうか。僕は絵本の100万回生きたねこの主人公を思い出した。この100万回生きたねこは、お話しの良さもさることながら、絵柄が個性的なようでいて、実は ” ネコらしいネコ ” であったことが人気の秘密なんじゃないか。

つまり、AIになにか作りたいもののたくさん(〜何千万枚)の写真を見せて、でてくる ” 特徴的な画像 " を製品デザインにしたら、どれもが人間のおもう " まさにそれ ” を作り出すことが出来るかもしれない。

ああそっか、ビートルズの曲をAIが作ったとか、フェルメールの筆跡で描いた新たな絵が最近ニュースになってたのはこれか。このAI技術が産業分野で一巡したあとに残される ” すべきことってなんだろう。

AIは既に確立された分野の ” 最高 ” を作り出すわけだから、 ” 分野 ” というものが出来がり次第人間にすることはなくなり、常に新しく作り出す苦しみを ” 全員 ” が味わうようになるんだろうか。

本 動的平衡

動的平衡福岡伸一さん著。久しぶりに読み返してみる。

人間の体は固定的なものでは全くなくて、いまこの瞬間も体の中で、タンパク質がものすごい勢いで作られてかつ、ものすごい勢いで壊されている。その、束の間存在するタンパク質が徒然に存在した”効果”として、僕たちは、生命は、ふわっとそんざいしている。川のみずはどんどん流れていくのに、そこに”同じ”川があるように。

福岡さんはその考え方を、自らの研究の失敗のなかで学んだ。ある遺伝子が発現しないノックアウト・マウスを作ったのに、全然支障なくそのマウスは生きていたと。複雑に絡み合いつつ動的な流れの中にある体内では、ある一つ機能に穴が開いていても、時間変化の中でどんどんそれを代替する作用が働いてしまうのが普通であると。

この動的平衡の視点は、DNAの二重螺旋構造の発見前から存在していて、一部の人は知っていたのだろうけど、日本ではおそらくずっと知られてなかった。今でも知らない人が圧倒的なんだろう。もっとも昔にいけば漢方や東洋医学系では逆に動的平衡に似た発想が、当然の知識としてあったんだろうけど。

現代では代わりに、体のイメージは機械論的で、薬やサプリメントを飲めばすぐに効果が現れるハズという、線形・単一的発想になっている。筋トレも同じ。

おそらく人の ” 意識 ” は「同時多発・相互連携的なコト」を捉えるのが苦手で、今はその ” 意識 ” が幅を利かす時代になっている。その結果、体の捉え方も " 意識 " が得意な範囲でとなり、固定的・線形的な発想になってきたんだろう。

つながるか分からないけど、最近流行りのAI(機械学習)が成果をあげられるようになったのは、線形・単一的なロジックによる処理をやめて(成果をあげられなかった!)、人間にはよく分からないモノゴトの捉え方をパソコンに(任せて)やらせたら上手くいったのだと。最先端はすごく動的平衡っぽいやり方だなと思った次第。

 

 

本 行こう、どこにもなかった方法で

「行こう、どこにもなかった方法で」BALMUDAの創業者、寺尾玄さんの半生記。

やっぱり一番ワクワクしたのは”自然な風”の扇風機「The GreenFan」が世にでるところ。創業した会社があと数ヶ月で潰れる状況で、最後にやりたいことをきちんとやろうと温めてたアイデアを形にしようとする。

低速で回る特殊なモーターの会社の社長を味方につけお金とツテを借り、中国で試作品をひとつだけ作って、それを持って家電量販店を回って先に注文を集め、売れるか分からない高価な扇風機(銀行の融資は全て断られて)を大借金で最初の数千個を作ってしまう。

さらには家電芸人を出待ちして、新しい扇風機の良さを体感してもらってテレビで話してもらうことに成功。オンエアの次の日から会社の電話が家電店からの注文で埋まる。

行こう、どこにもなかった方法で

行こう、どこにもなかった方法で

 

憧れるのは、創業前に数十軒の工場を訪ねてモノづくりの基本を学ぶところ。臆せずどんどん知らない人に会って話を聞いて、最短距離で自分のやりたいことに邁進していく姿勢は、著者の常に本気な生き方を象徴する話のひとつだと思う。

そうやって著者が自分の可能性をどんな時でも信じられるのは、ご両親の生き方(教育?)の賜物だと思う。その半分くらいの可能性を信じられる自分は両親に感謝することに思い至り、BALMUDAの扇風機をプレゼントしたことがある。

最初のうちは ” 風の違い ” が分からなかったらしいけど、一年ぐらいたってから「ずっと風にあたっていられる」と父親が喜んでいた。そういう幸せを自分の知らないところにまで届けるような仕事をしたいと思う。

本を読んだ後に糸井重里さんとの対談を読むとさらに。

本 フリーライブラリで学ぶ機械学習入門

本「フリーライブラリで学ぶ機械学習入門」 

勉強会の講義をまとめただけあって、筆者が入門レベルとしてわかってほしいと思ってる所はほぼ分かる(まだ途中読み)。Jupyter notebookを使って順々にスクリプトを自分で動かしていくので、実作業としてもわかりやすい。

(Jupyter notebookはスクリプトの途中に勝手にprint文をどんどん挿入できて、変数に何が入ってるかを確かめられることを覚えてからは、一段と理解が深まった。本筋に関係ないけどこれ便利だわ)

内容としては機械学習の大枠の説明、回帰木、ランダムフォレスト、クラスタリング、潜在ディリクレ分配法、協調フィルタリング、評判分析、画像認識、ディープラーニング理論・実践とよく詰め込んだものだと思う。

機械学習の大枠を実践として知りたい人にはとてもいい本だと思う。プログラム自体が初心者の人には辛い。少なくともPythonの文法は別でやる必要がある。 

フリーライブラリで学ぶ機械学習入門

フリーライブラリで学ぶ機械学習入門

 

やってみればすぐ分かるのだけど、たとえば手書き数字の認識プログラムは、プログラムに慣れた人なら半日で基本のところは使えるようになると思う。それぐらい既に確立された技術になっている。(どうやって認識しているのかはブラックボックスのままだが)

問題になるのはリアルに業務として手書き数字を認識させる際の、データ切り取り方や、画像のサイズ圧縮する際の数字としての特徴を残すための方法論だろうと。普通に手書きしてスキャンして、適当に画像を切って読み込ませるたらデータ的中率は0%になった!(笑)余白を限界までなくして画像を切り取ったら60%くらいになった。この余白を無くす切り取りを自動化するところからが始まり。その先をどうやったら99%とかいくんだろうか。

 

個人的には、Python初心者としてAnacondaやJupyter notebookのインストールでけっこうつまづいた。同じ困った人向けの情報として、kerasのcifar10.load_data()でエラーがでたとき:(ダウンロードの途中でやめてしまったときなど)は、Macなら隠しフォルダを表示できるようにして、usr/login_name/の中にある「.keras」フォルダを削除すると動くかもしれない。

Pythonに限らないんだろうけど、新しいプログラミング言語を導入するときの、最初の環境設定のみを対象にした個人レッスンって需要あると思うんだけど。

一人でやったから雑誌や本を20冊くらい調べてやっと、何がなんだか分かるようになったけど、かけた時間のもったいなさと言ったら。「パスが通らない」の一つをとっても。

機械学習をかじって思ったのは「機械学習って”差分”を減らしていく」ことを、いろんなやり方でやるってことなんね。どんな現象も最終的には、「モデルA = 0.98、モデル B = 0.97だから、モデルAを採用する」みたいな形になって。面白いようなつまらないような。

この本の次にもう3冊用意してある。オトナだから時間をお金で買うのだ。

 これは「フリーライブラリで学ぶ機械学習」の兄弟編でいいと思う。説明量が増えてもう一歩先へという感じ。

Pythonではじめる機械学習 ―scikit-learnで学ぶ特徴量エンジニアリングと機械学習の基礎

Pythonではじめる機械学習 ―scikit-learnで学ぶ特徴量エンジニアリングと機械学習の基礎

 

 次はその発展編。と思ったけど著者はこれすら入門編の位置付けらしい。使ったあとにまた感想を書いてみる。

実践 機械学習システム

実践 機械学習システム

 

 ここまで出来るようになったらすごい!けどやってることは相変わらず差分の精度を上げること。

最後は、ディープラーニング自体を自分で理解&実装しようという志の高い本。ブラックボックスをなくし、本気でゼロから作る。買ったはいいけど、そこまでやるかどうか。。。

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

 

 

 

本 動物翻訳家

本「動物翻訳家」片野ゆかさん著。

半ページでその世界に没頭させる。新たな環境に連れてこられたペンギンの幸せと不安、環境の変化は全然平気だけど群れ内の関係性には悩むチンパンジー。

ペンギンは不安なときは水中に逃げるらしい。群れの一頭が新たなことに挑戦して、それが安全だとわかると他のペンギンたちも同じことをするようになる。保育器のなかで育てられた仔ペンギンの「ペンペン」は、飼育員さんを親と思ったのか、そのあとをついて回るようになり、それをみた群れのメンバーがペンペンの行った場所は行動範囲にしていく、という好循環がおきたり。

チンパンジーは能力が高いぶん個性も強く、飼育員さんはそれぞれの ” 人格 ” に合わせて対応するのが仕事のまず最低ラインだったり。子育てを知らないチンパンジーに、人形を使って抱っこを教えてみる飼育員さん。人間より全然強いチンパンジーと同じ部屋のなかで生身で向き合うのは、すごいことだなと思う。同時にチンパンジーのほうも自分がその飼育員さんを傷つけないように、そっと動くという所に愛情を感じる。

動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー

動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー

 

 動物園に行ったときに動物が楽しそうにしていたら、それ は ”自然に ” そうなったのではなくて、飼育員さんが絶え間ない観察と工夫により ” 人工的に ” 、動物のための最大限の環境を造ってきたんだと。

動物の感覚の一端や、飼育員さんの着眼点や工夫の面白さがストレートに伝わってきて、これって対象が魅力的なだけじゃなくて、文章もすごくいいんじゃない?と途中で気づいた。読んだらあとは動物園に行きたくなる!

 

本に出てくる動物園はZOOネットワークの「エンリッチメント大賞」を受賞した動物園だそうです。

本 できない脳ほど自信過剰

「できない脳ほど自信過剰」池谷裕二さん著。

いずれにしても、ヒトの知能が礼賛される時代は、そろそろ終焉を告げるでしょう。これは運動能力がたどった経緯とおなじです・・・中略・・・いずれ知能はブランドではなくなるでしょう。人工知能のほうが賢いからです。(本文より)

 なんだろう、池谷さんが言うと、素直に人工知能と付き合えばいいんだという気になる。AIに仕事が取られちゃうとか漠然と不安を感じてたけど。

たぶん ” 不安 ” は「常に同じでいたい」っていう脳の働きのせいなんだろうけど、産業革命の時だってなんとかなったし・・・たぶん。変化してなんぼ!って思えば。というか激しい変化の時代に生きれるって、望んでも得られないチャンスかも。

そして機械が知能労働をするようになるから、” 人間らしさ ” を新しく考え直さないといけないんだろう。・・・別に考えなくてもいいか。楽しければ。

できない脳ほど自信過剰

できない脳ほど自信過剰

 

本文の98%くらいは(人工知能とは全然関係なくて)一つ一つが面白いトピックで、メモしまくった。数値フィードバックさえあれば血圧も「念じるだけ」で変えられるとか、年齢とともに記憶力が低下するのは老化ではなく、脳の使い方が記憶から応用にシフトするからだとか。

自分の脳の新しい使いかたや機能を知ることが嬉しいんだから、AIが変えていく世界での、新しい脳の役割が与えられた時は、きっと楽しく感じられるんじゃないかな。

本 ルールを変える思考法

「ルールを変える思考法」川上量生さん著。

経歴や仕事の仕方も面白いけど、やっぱり考えが一番面白い。なんで文明が発達して、コンピューターが出て、ネットが出て便利になったはずの社会で、つらい会社勤めになったりしているんだろう?って思ったら、その回答がここに。

いまの世の中の進化は、人間そのものの進化ではなく、あくまでも「人間の外にあるロジックの進化」になっているからです。(本文より)

言い換えると、もうすでに世の中は人間のための発展じゃなくて、社会を貫く「ロジック」が動きやすいように環境を整えていくお手伝いを、”人間”がしている。あくまで主役は「ロジック」なので、人間の都合(幸せとか健康とか)は二次的なものとなってしまうから、しわ寄せが弱い部分に来てるんじゃないだろうか?

AIがいつか人間を超えるというイメージは多くの人が持っている気がするけど、それは「ロジック・ファースト」世界の「分かりやすいアイコンとしての " AI "」 と捉えたほうがいいのかもしれない。

現在の世界で有能な人が活躍すればするほど、ロジック主義の世界がどんどん発展・構築されていく。「ルールを変える思考法」というのは、そのロジック・ファースト世界のルールに、どれだけ長く・深く対抗できるか?を考えた軌跡であり、同じように戦ってくれる(遊んでくれる)人へ向けてのメッセージだと思う。