「習得への情熱」Josh Waitzkinさん著
チェスの世界トップになったあと、数年で太極拳の推手の部門でも世界一になった著者
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チェスの場合、一つ一つの駒の動きや特性を徹底的に学んだあと、駒同士の組み合わせや、序盤、中盤、終盤での戦略、心理戦など、どんどん学びのレイヤーが上がっていく
すると、初心者の頃に学んだことと全く逆の価値観に遭遇することもあるという
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例えばチェスで、ポーンの相対価値を最初に10ポイントと習ったとする
それは駒同士の組み合わせを学ぶと、12にも7にも変化することを次の段階で学ぶ
最終的には、駒の価値は不定形となり、形勢や心理戦の中でいかようにも変化するものとなる
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つまり上の段階にいくためにいは、一度身につけたものを手放す、一定期間パフォーマンスが下がる「負の投資」をしなければいけないと著者言う
太極拳では、本能的に身につけた防御反応を体から取り去るために、相手から投げ続けられるという練習をしたという(やりたい人は)
そうやって、相手から攻撃を受けること自体に慣れて、恐怖心が取れると初めて相手の動きが見えるようになってくると
逆に最初から身体性能がいい選手は、負の投資を行わないでもそこそこ成績が良いために、あるレベルで止まり続けているような描写があり、示唆的な話だと思った
また、チェスでも太極拳でも、「心を今におく」のが、一番大事なことだと
対象にひたすら深く没頭していながら、同時に自分を含めた周りへの意識もある
時間の流れが変わり、長いんだが短いんだか分からない、まっすぐじゃない時間が流れている
無意識のインスピレーションが湧いて、自分の知らなかった自分に出会えるという
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その「心を今におく」ために、技術を技術として意識しなくなるまで高め、自分の中の恐怖心や怒りへの対処の仕方を生み出し、リラックスする方法や、その他この本に書いてある全ての話があるんだろうと思った
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余談ながら、原題「The Art of Learning」が、日本語版「習得への情熱」と、気持ちの問題にすり変わっているのは知っておいた方がいいかもしれない
徹底的に「学び方の技術」の本