「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美さん著
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岸田さんの弟の良太くんは発達障害なのだが、なんだろう、障害って言葉はどうでもよくて、彼自身の個性のほうが伝わってくる
それこそまさに岸田さんの観察眼や解釈力のすごさなんだけど
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たとえば、弟と二人でバスの列に並んでるときに、どうしても小銭が必要になった
そこで岸田さんは、弟に指で丸を作って「観光案内所で両替してもらってきて」とお札を渡す
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頼んだそばから本人が、「弟は観光案内所って分かるんだろうか?」「そもそも両替ってわかるのだろうか?」と疑問いっぱい
結果は、良太くんがコーラを自販機で買ってくることで、おつりの小銭をゲットして任務完了
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岸田さんの想像では、良太くんの頭の中は「お姉ちゃんは丸いもの(=お金?)がいるっぽい」「その後にいった言葉はよくわからない」「おお自販機がある。あれにお札をいれると丸いのが出てくる」「俺のすきなコーラが売ってる・・・」てな感じ
良太くんはコーラをゲットして満足、岸田さんも満足
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この「だいたい(みんなにとって)上手くいった」というラインが大事なんだろうな
言い方は難しいのだけど、この良太くんが行動する軸が誰にとっても、人生の大きな筋なんじゃないかな
その辺りの岸田さんの良太くんへの本気の尊敬が、理解を生んでいる気がする
本人が面白いのか、文章に勢いがあるのかとても楽しかった