「世界の神話」沖田瑞穂さん著
インドから始まって全世界の神話が描かれている
最初の一章で、神話の世界に隠された秘密にはたと気付かされた
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例えばヒンズー教の神話には、神々がヒマーラヤからガンジス川に水が流れ落ちるところで祭りを開いた話がある
そのお祭りにはシヴァ神が呼ばれなかったため、彼は怒り狂い、神々を痛めつけ、最後には仲間に入れてもらい、シヴァ神も祭りの分け前に預かるというストーリー
・・・だからなに?と言いたくなるけれど、この話は空想ではなくて、何かを遺したくて作られたものじゃないだろうか?
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・・・ここからは個人的な想像だけれど、この話は「異民族がどうやって混じり合い、そして新たな宗教が起こったか」を神話という形で遺したんじゃないかと
つまり、
神々 = インダス川を越えてインドに入り、ガンジス川に辿り着いたアーリア人
シヴァ神 = 土着の民族
の比喩で、
おそらくアーリア人は土着の民族と交わらずにいて、さらにだんだん勢力を増してきて、そのことに土着の民族が「うちの庭で勝手なことすな!」と怒って、戦争して和睦して、お互いの文化が混じり合うようになって、(バラモン教にアーリア人の文化が加わって)ヒンズー教が生まれたと
その歴史を民族としての記憶に留めておくために、神話として残されていったのではないかと
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・・・あくまでこれは個人的な想像で、作者は直接そのことは書いてない
ただ、ヒンズー教の成立年代やアーリア人の侵入の時代が併記して書いてあって、読者に神話と歴史との関係を想像させるように仕向けている
その真偽はともかくとして、この神話たちが語られていた時代には、人間の根本欲求だと勝手に思っている「私たちはどこから来たのか?」という問いに、民族ごとに答えるものとして神話があったんじゃないかと
この、神話への見方をもらっただけでも十分な価値があった