ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」ブレイディみかこさん著

 

アイルランド出身の夫と11歳の子供がいる、日本出身の著者

 その家族を通じて、今のイギリスで暮らすことのあり様がすごく良くわかる

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イギリスではお金がない家庭の多くは、子どもは公立の人種多様な中学に行くことが多いらしい

著者の子どもがいく学校にアフリカ系の女生徒が転入してきたとき、全クラスで、FGM(アフリカの一部で今も行われることがある女性器切除の風習)の授業が行われた

夏休みなどの長期休暇で生徒がアフリカに戻ったときに、親や親せきに騙されてFGMが行われたりするという

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そんな授業が行われると、当然生徒の中で転入生の女の子は大丈夫なのか?という話が持ち上がる(ある種の騒ぎになるともいえる)

それは学校側として予定していたことで、本人がなかなか言い出せないことを周りの生徒や親たちも巻き込んで、表に出して解決すべき課題にしてしまうというやり方を選ぶのだと

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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 この話はさらに別の形で続いて、そのアフリカ系の女生徒のお母さん(アフリカ系)が、学校に用事で来た時に著者は話す機会を得る

そのときに著者は、FGMでも話題になってたから当然そのアフリカ系のお母さんが誰か想像ついても「ああ、あながた転校生のお母さんね」みたいないい方はポリティカル・コレクトネス(PC)に反しているから言わないのだと

代わりに手間をかけて、「あなたのお子さんの担任はどの先生?」「ああ、〇〇先生?」「それなら私の息子と同じクラスだから、もしかして転校生の△△のお母さんかしら?」というような手順をきちんと踏むのだと

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そうやって、著者がきちんとPLに則った挨拶をしても、相手からは「あんたがチノ(中国人)のお母さんね」とPLを無視した返しをされたりする

しばらく会話が続いて、著者がイギリスでナチュラルな質問の「ホリデー(夏休み)はどうするの?」という話を降ると、そこが地雷になったりする

「アフリカには戻らないよ(FGMなんてうちの娘にはさせないよ!)、安心しな!」と睨まれて、そのアフリカ系の女性は怒って去ってしまったり

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こういう人種差別を巡る問題と、お金の格差問題が二重に絡まっているなかで、著者たち親は必死に、よりましな道を選んでいる

当然、その子どもたちも大変なハズなんだけど、なんだか親よりも普通に ” 違い ” を受けとめているように見える

「そこ争うとこ?」みたいに

それよりも、クールであるかクールでないかだけが人生の一大事で「親と一緒にお出かけするのを誰かに見られること(アン・クール)に比べたら、ほとんどのことは我慢できる!」みたいな様子がおかしい

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ちょっと他に類をみない記録エッセイだと思う

おすすめです