「虚無回廊」小松左京さん著
人生で2つ目の未完の小説に出会ってしまった
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物語の中では、地球から数光年の距離に、謎の超巨大物体「SS」が現れる
そこに人類は、自分たちではなく、AI(人工知能)を含む、AE(Artificial Existance:人工存在)を数十年かけて派遣する
長旅のすえに、AEたちはSSに着き、異知的生命体たちと出会い、SSが何であるかの最初の手がかりを知り・・・でなんと未完!!!!
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感覚的にいうなら、物語全体の30%くらいで終わってしまった感
これから、「SSとは何か、何のために、どうやって生まれてきたか?」という大きな謎の解明を縦糸にしつつ、「AE(存在)とはなにか」「時間とは何か」と「異知的生命体の振る舞いの面白さ」を横糸にした、一大叙事詩が織られるはずだった
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たぶん筆者は、SSが何であるかの漠然とした感覚だけはありつつ、書き進めていたんだろうと思う
逆に言うと結論がわかってるわけでも、展開が決まってるわけでもなく
SSを追求しつつ書いてるなかで、AE・時間・異生命体のリアリティが、物語の進行に合わせて作者の中でも成熟していくといった手法をとりながら
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作者がなぜ中断したのかは知らないけど、これで良かったのかもしれないとも思う
虚無回廊は、あまりにも大きいストーリーで、まだ今の人類にとって早過ぎる話だという捉え方もできるから
例えば、いま世界に残っている一大叙事詩や聖書とかって、それが語られた時代ごとの人々のリアリティに沿ったものだけが、ストーリーとして加わって残ってきたわけで
虚無回廊の後半は、もっと宇宙や人間のことが分かってきた何百年後か何万年後に、新たなお話がその時こそ生まれるんじゃないかと
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未完というのは一番のSFかもしれないと今わかった