ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 脳はみんな病んでいる

「脳はみんな病んでいる」池谷裕二さん、中村うさぎさん対談

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・脳についての対談(「脳はこんなに悩ましい」の続編)

・二人が高機能自閉スペクトラム症の診断を受ける

 という構成で、人口の1%の人に切実に必要で(その周りの人たちも知ると)人生が少し楽になるお話

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脳について3つ考えさせられた

「視覚」において、目から入る情報は3%以下である(本文より)

つまり一般に「感覚」とされているものは、こんな感じなんだと

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えー!?っと思うけど、そうなんだって

つまり、「何かを経験してる!」と思ったときに、過去の経験から補完される情報が97%で、外部からの刺激ってのは「3%果汁入り」みたいな添え物なんだと

思うに「初めての経験」をするときにだけ、長く感じられたり、色鮮やかに感じられたりするのは、経験が少ない分、外部刺激の量が10%とかに増えてるんだろうなーと

で、さらに想像するに、「脳内の情報」というののうちに、脳自体をアイドリングさせておくための、意味不明な状態みたいなのが半分とかを占めてるんじゃないかなーって気がする

脳はみんな病んでいる

脳はみんな病んでいる

 

 2つ目は

「脳言語(©️中村うさぎ)は人それぞれ」

という話

これ考えたことなかった

脳の構造が一緒で、インプットに対するアウトプットも似てるから、人の頭の使い方って同じようなものだと思ってたら、そこはそれぞれが勝手な使い方をしてるそうな

だから脳の使いかたをモニターするだけで、誰の脳なのか分かるとも

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この話を聞いてその脳言語ってどんなん?って考えたけど全然わからないから、外部との関連を考えた

その一つが、いろんなとこで言われる「外国語学習の必要性」ってのに対して、その前にやることがたくさんあり過ぎるだろ!ってこと(そのイメージを図にする)

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まず、「脳言語を鍛えろ!」から始まって、その上に「母国語の学習」があって、そのさらに上に「外国語ができるといいな」がくるわけで

「外国語」だけ学習したところで・・・閑話休題

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3つ目は

AIが人間にはもう理解できない「真理」に到達していく可能性

これも初めて考えたんだけど、今までは人間が生物のおそらく最高の知性を持っていると盲信していたから、

「真理」=「(他の生物ではなくて)人間の最高到達点」

が暗黙の了解だったわけで

今後はAIが人間には理解できない「真理」や「理解」をしていくとき、そのことを人間はどう扱えばいいのか?って問題

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これ、人間の伸び代がまた増えたって思った

たとえば「神は存在して全治全能である」って多くの人が信じていた時代は、師弟関係のように自分を超える存在を前提とすることで「成長・成熟」の「伸び代」が自然に確保された

でも、宗教が以前に比べて隅に追いやられる社会において、人間がトップという意識が強くなるほど、その「伸び代」が想像できなくなり、そのことが逆に個人個人の「成長・成熟」を鈍化させていたんじゃないかって思うわけ

でも、ここでAIがある種、知における神の座にとって変わることで、そのサイズの分だけ、人間にとって「成長・成熟」の伸び代が意識されていいんじゃないか?

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最後に、著者の二人が「高機能自閉スペクトラム症」の診断を受けて、そのドクターXを含めた3人の対談がある

今までの著書の池谷裕二さんと違って、今回は「生身のかなり痛い経験をしてきた池谷裕二さん」が出てくる

中村うさぎさんも、その激しい経歴の理由がドクターXの話によって分かってくる

「高機能自閉スペクトラム症」の人がどういう風に世界を見て、経験してきたかという話が、同じ傾向を持つ(1%の)人たちにとって、すごくありがたい指針となりうる

さらには1%の周りの人たちにとっても

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この本を読んで思ったのは、「高機能自閉スペクトラム症」に限らないんだけど、一般に「障害」と言われてるものは、社会の状況にすごく左右されるものなんだなと

そして可能性としての話だけど、「高機能自閉スペクトラム症」の人がもしいなくなったら、おそらく社会の発展の速度が落ちるんじゃないかと思う

遺伝子進化のアルゴリズムをさわると実感として分かってくるんだけど、違うタイプの振る舞いをする個体が、ある一定の確率で存在することが、全個体の存在を利するというのはもう分かっていることで

意義深い一冊