「空海が日本という概念を発明したのではないか?」というアイデアを思いついた著者。そのアイデアを考えていくために、関係する本をどんどん読んでいく「本を思考の道具として使う具体例」が最終的に一番参考になると思う。
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まずは空海自身を知りたいから「三教指帰」とか空海の著作を読むのだけど、難しい。それらは、山のてっぺんのような「頂き読書」として扱い常に本を携帯して、暇な時間があれば2、3行づつでも読み進める。
また空海の思想と量子力学につながりを感じた著者は、量子力学の入門書を読み漁る。10冊前後読むと量子力学が(数学的な理解ではないが)だいたい何がなんであるかぐらいは分かってくると。たぶんこのアイデアがいつか空海と繋がるのだろう。
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そして最初のアイデアの話に戻ると、それまであった「ヤマト」に、空海の真言密教の思想を取り入れて初めて、「日本」という概念ができたのではないかと著者は考えている。そのために著者はヤマトに関する本が読みたくなり、2-3世紀のヤマト勃興期から、空海が生まれる9世紀までの歴史の本を調べるようになる。
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本嫌いだけど、本を使う価値は広く伝えたい著者。
精神科医を前面に出すのは、「本も使って自分で学び続ける」ことが、それぞれの人の心の平安につながる最短の道だと考えているからだろう。