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本 こころと脳の対話

 「こころと脳の対話」河合隼雄さん、茂木健一郎さん対談

個人的な経験だけど、ひどい夢を見る人がいる。あまりにも辛い夢で朝起きたときには疲れ果てて、その日はもう何もできなかったりする。座禅をしたり心を落ち着けることができると、悪夢が減って日常生活が送りやすくなるという。

いったい夢はなんのためにあるんだろう?

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対談では、夢の一つの作用として「起きている時間に経験したことの補完作用がある」という。

たとえば今から自分がお金を借りようとする相手、A氏に対して、自然にそのA氏のことをいい人だと意識は捉えてしまう。A氏がいい人でないと自分が困るから。その時に、感覚はA氏が変であることを捉えてたりもするが、意識には上がらない。

それが夢の時間になると、A氏が変な格好で出てきたりする。感覚が捉えてた(意識に押さえつけられてた)部分が表に出て来るから。

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思うに、この段階でやっと、現実世界でおこったことが「全体」として経験されるんだろう。つまり経験全体として辻褄が合わなかったり、筋が通ってなかったりもするから、意識だけでは上手く扱えなく、夢まで含めてなんらかの受容をしているのかもしれない。

こころと脳の対話 (新潮文庫)

こころと脳の対話 (新潮文庫)

 

この本では脳科学の話は少なめで、茂木さん自身が体験してきた箱庭療法の話などをもとに、主に河合隼雄さんが心の話を説いていくのがメインになっている。

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個人的に興味を惹かれたのは、既存の「科学」で定義できない「新たな知のあり方」がそこにあるということ。

つまり、こころの問題は、それを扱う人の「関係性」や「一回性」を伴うので、「普遍的な再現性を要求する既存の科学」の範疇では対処できないし理論化できない。

しかし患者さんは治っていくから間違いなく心理療法などには意味があり効果がある。単に現在の「科学」の範囲にそれはない、と。

現在の「科学」で説明できないものは全て「宗教」か「オカルト」のように捉えてしまう人もいるとは思うけど、その話ではない。もちろん宗教自体にも価値があるのも言うまでもなく。

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この「科学と違うレベルで普遍的な方法論」はどう捉えればいいんだろう。現在の「科学」の定義を拡張するか、「新たな知のあり方の言葉」を定義するか。

思いつきだけで言うなら、既存の「科学」の分野はAIが席巻していくと思う。つまり人間に残された部分は、現在の「科学」ではない「新たな知のあり方」の分野だけなんじゃないか?

既存の「科学」は「AI科学」、残された「新たな知のあり方」が「Human科学」みたいになっていくかもしれない。