ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 樹木たちの知られざる生活

 「樹木たちの知られざる生活」Peter Wohlleben 著 長谷川圭 訳

この本を読んでから外を歩くと、街路樹や庭の木たちが寂しく一人で生きているように見えてくる。木は「集団で生きる生き物」だった。

・・・集団生活のためにはルールや妥協が必要で、その関係性や振る舞いを知ることで、目の前にある木の気持ちが見えるような気がしてくる。

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同じ木の種類でも個々の木の違いは、遺伝子的には人間よりも全然大きいという。隣に生えている同じ木でも、暑さに対する耐性だったり、乾きに対する耐性が全然違ったりする。

その木たちは、根っこでは特定の菌を通じて土中の栄養素をもらったり、菌を通じて栄養を融通しあったりしている!---枯れ木や切り株が周りの同じ種類の木から栄養をもらって生きて?いるケースがたくさんあるという。それが「優しさ」なのかはまた別の話。

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樹冠では木の種類によらない日光場所取りゲームが静かに激しく行われている。成木たちで樹冠が埋まってしまうと、日光はもう下に届かない。出遅れたり、後から生まれた木たちは成長を止めたまま、数十年単位で次のチャンスを待つ。老衰や落雷、虫害で成木が倒れて、樹冠に穴が開く一瞬のチャンスを待ちながら。

樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声

樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声

 

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そういう競争をする一方で、森として存在することで温度や湿度や水を一定に保つことを共同で行っている。雲は海岸から600km以上の内陸部にはできないが、森が海岸から続いているところでは、その水蒸気により内陸部でも雨が降ることができ森ができる。

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木たちにとって菌、昆虫、小動物たちと繋がりは単なる食物連鎖ではなく、網の目のようにお互いの存在や機能が絡まって存在している。それぞれが何かを食べ、食べられ、何かに負け、天敵になり、他の生き物に助けられ、手助けをしている。つまり、生き物は各々が複数の役割(機能)を同時に担って存在している。

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木は、その競合関係や協力関係が何重にも絡まっている中で生きるのを常としている。街中に一本で立っている木には「日光争い」はないが「助け」もない。植樹された木は「根っこの先」という「判断する能力」を奪われているかもしれない。

自分の世界が一つ変わる本。