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本 リスクと生きる、死者と生きる

「リスクと生きる、死者と生きる」石戸諭さん著

東日本大震災に関わらざるを得なかった人たちへのインタビューと著者の思いを綴った本。

津波で逃げ遅れた人の家族の言葉、原発で避難を余儀なくされた人、その後の復興をになった人たちの話は、どれもずっしりきた。例えば避難をしてもしなくても全てが後悔につながってしまう。自分だけがとか、あの人を残してとか。

リスクの評価というのは本当にどうしていいか分からない。一つ言えるのは、昔の人が遺した人間の行動パターンへの警告はたいてい当たると。例えばなぜ昔の人がわざわざ「津波てんでんこ」という言葉を残したか。見捨てられないという思いがさらに被害を生んでしまう、自分だけがという思いが自分も殺してしまう。そういうのを全部見越して、小さな言葉にまとめたものだから。

リスクと生きる、死者と生きる

リスクと生きる、死者と生きる

 

 個人的な話だが同僚が「福島の(生産物)ってやっぱ怖いよね」と言った言葉がいやだったんだが上手く返すことができなかった。何かを安全と危険の二分法で分けたら楽だし、自分だって同じことをどっかでやってるから何も言えないんだけど。

海外から見たら、いまだに日本全体が福島の事故で放射の汚染されているって考えている人が普通なんじゃないだろうか。「日本の(生産物)ってやっぱ怖いよね」って。

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この本のタイトルにあるように、リスクと生きる、という覚悟を決めないといけないのかもしれない。めんどくさいけど、自分が分かる範囲で科学的な知識を使って、安全の程度や危険の程度を考えて、つねに微妙な不安と付き合って生きて行く覚悟。不安を増加させること自体が”コスト”だと考えて、人生の時間を取られることを一つずつ減らしていきつつ。

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死者と生きるというのはもっと普通のこととして考えてもいいんじゃないかと思う。もともとそういう国だし。ってか、その方が幸せな気がする。自分一人のために生きるのってつまらないし、行動の範囲もアイデアの出方も狭まるし。

幸せに楽しそうに生きている人たちは、死者と生きている人も多いのかもしれない。