「考えの整頓」佐藤雅彦さん著
この本を読んで気づいたのは、自分はアーティストの言葉や振る舞いにしか興味がない、ということだった。
著者の定義によるとアートとは「なぜ生きるか?」ということ自体から考えることで、比較してデザインとは「よりよく生きるための方法」を考えることだと。
この本は雑誌「暮しの手帖」に連載されていたものをまとめたもので、佐藤さんも最初は生活の役に立つ連載にしようと考えていたのだけど、結局そうはならなかった。
たとえば幼児が言葉を覚えるプロセスを観察していて、
それにしても、幼児はほとんどと言っていい位、2回繰り返して、覚えたての言葉を発するのだが、どうしてだろうか。(本文より)
というような話を書いている。 ・・・暮らしの役には立たない(笑)でも、言われてみるとたしかに2回ずつ発音しているイメージがある。勝手な推測だが、1回目の言葉は発音という運動機能への挑戦であり主体的な意識であり、2回目の言葉は主に聴覚機能への挑戦であり受動的な意識なんじゃないかと。与えるのが先で、もらうのは後。何かにつながりそうなんだが・・・。
佐藤さんはこんな感じで自分の気づいたことを、心の動きまで書いて解きほぐしていく。その作法自体がまさにアートで、その作法を学ぶこと自体が生活を豊かにしてくれると言っていいんじゃないかと。