いままでの小説と同じ結末では、あらない。ある種、ノルウェイの森の違った未来がここにあるような気もする。それがいまの村上さんから生まれるものなのだろう。
いったい、まりえはなぜ消えてなくてはいけなかったのか。それが主人公とどう関わっているのかいまだわからない。そこに論理を求めてるわけでもなく、村上さんがどこからか取り出してきた世界のあり方に疑問を挟むわけでもなく、ただ、その世界ともう少しやりとりして、「そういうことも、ある」と自然に言えるように、その世界にもっと浸りたいというのが本当のところ。
主人公の言葉に、絵は、描き手が終わりを決めるんじゃなくて、絵が終わりを決めるという話が出てくる。おそらく、間違いなく、村上さんの長編は(村上さんではなく)文章自体が最後を決めているのだと思う。であれば、この新しい結末が意味するところは、文章の器となる村上さん自身がなんだか次のステップに移ったんだなと。ノルウェイの森の宿題に答えを出したような。実際の村上さんは知らないけど、小説を生み出すときに文の中かそばにいるムラカミさんがやっと何かに向き合えたような。
そして自分の問題として騎士団長殺しから逃げていることを思い出させられる。それを自分自身が終えない限り、ノルウェイの森から卒業できず、この本を本当にわかることもできない気がする。