「人をつくる読書術」佐藤優さん著
この本で逆に思ったのは、人をつくるのは本よりもまず、人との出会いであると
著者の場合は、親にはじまり、教会の牧師さんや、塾の講師、失意の赴任先のイギリスの古書店主など、その時に応じた出会いがあり、悩みや疑問や興味に応じて、今読むべき本や、読んでる本の理解を深めるお手伝いをしてもらえた、というのがとても大きいと思う
結果として、興味の対象が広がっていき、古典や哲学といった幅広い教養につながる読書になり、それが著者をつくっていったのだと
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個人的には本を読むとき、その本だけを切り取った理解や共感という読み方をずっとしてきた
本は一冊それだけで成り立つべきだという、信奉みたいなのがあったから
しかし、書かれた背景やそのときの時代、人の考え方の歴史的変遷を知らないまま読むと、その本の理解が届かないどころかマイナスにも成りうると著者はいう
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たとえば、ニーチェを若い頃に最初に読むのは勧められないと
神の否定の話をいきなり読んで、最初からニヒリズムに染まってしまうと社会でそもそも生きづらくなる
だから、哲学などは時代を追って(おそらく自分自身の経験も積んで)読む方がいいのだと
自分の言葉に直していうと、「人類の考え方が発達してきた文化・文明的な歴史」を、「一人の人間の考え方の歴史」としても繰り返すことなんだろうな
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著者もその人との出会いがつねにあるわけではないことを念頭に、本を読むときにそれのガイドとなる本を持つことをすすめる
たとえば日本の古典を読む場合には、中高の授業の副読本として使われる便覧などを一緒に読むといいと
その言葉に従って実際に著者おすすめの便覧を買ってみたら、たしかにいい
本についての時代背景や文化、内容の概略や写真や絵柄などがあり、どうしてこういう本が生まれるに至ったか、この本は当時の人にとってどういうものだったかも考えやすくなる
と考えてて、学生時代のもったいなさに気づいたのは、読書の位置付けが自分の中で違っていたこと
本にはその瞬間のエンターテイメントしか求めてなかった(テスト目的ですらなく)
比べて筆者のいう本の読み方は、その本を理解することが主目的ではなく、「社会や世界や人生ってなんなの?」という疑問を自分なりに考えていくために、目の前の本をどう使っていくか?という発想なんだなと
そういう自分ゴトとなる疑問を持つのがさらに最優先でって言い出すと、この本の範囲を超えてしまうのだけれども
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最後に、この本では著者が成長の過程で読んできた本のリストが章ごとにまとめられていて参考になる