ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 声をかける

「声をかける」高石宏輔さん著

道ゆく女の人に声をかける。自分がどう思われるかが怖くて声がかけられない。声をかけても無視される、拒絶される、たまに返事がくる。自意識過剰であればあるほど上手くいかない。機械のように応答ゲームをするほうが上手くいったりする。

声をかけ続けるなかで、何かが自分の中で変わっていく。自分がしてるナンパを軽蔑しながら、声をかけてついくる女なんて最低と思いながら、そこにしか道が見出せない。ミイラ取りはミイラになっていく。

 声をかけ続けるなかで、ひとりの女性に出会う。それまでの ” 経験 ” が使えない。” テクニック ” は全て見透かされるようで、生のままの自分しか使えない。

声をかける

声をかける

 

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ナンパ・ケース・スタディのような本で、輪廻転成のような逃れられない苦しみが描かれるとは思わなかった。いつからこんなに人と出会うのが難しくなってしまったんだろう。

こんな自傷行為がいやだから、人と出会いたくない、付き合わない、セックスしないという人が増えるのは分かる。

そしてその方向性が小さくなっていく理由が想像つかない。

もしかしたら、人間は戦争や環境汚染で滅亡していくのではなくて、緩慢な人口減少で自然の歴史の中に埋もれていくのかもしれない。

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この本は、生身の人に憧れて、今の自分の属している自傷の大地の最果てを探検した人の記録と考えてもいい。そこから生身の人に出会える向こうの大地へは、自傷ではないやり方で大きく何かを捨てなければいけない。

その先の話はきっと明治の文学が教えてくれると思う。