ココロミにきみ

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本 半分生きて、半分死んでいる

 「半分生きて、半分死んでいる」養老孟司さん著

 月ごとのエッセイをまとめたもの 半分死んでいるという自覚の養老さんが、今現在の社会のあり方が「何を語っているのか」を言語化してくれている

 

たとえば日本における「少子化」と「子供が将来を悲観している率の高さ」

少子化」というのは突き詰めれば、「子どもたちに『おまえなんか要らない』と大人たちが宣言していること」に他ならない だから大人たちからそう言われている子どもたちが未来を楽しく思える筈がない、というのは言われてみればよく分かる

また、「環境保護のために昆虫採集を禁止」というのは理屈に叶ってるような気がするけど、養老さんによると自動車一台を廃車するのに数千万匹の虫が死ぬという現実が一方である つまり昆虫採集禁止は本気で何かをしたいわけではないことがよく分かる

半分生きて、半分死んでいる (PHP新書)
 

養老さんはよく、解剖学という「学問分野」があるのではなく、「考え方」があるのだという なんらかの塊をほぐして、それぞれに名前をつけていく行為

その解剖という手法で、都市(意識)が行なっていることを、「目的」や「お題目」ではなく、「実際に果たしている機能」や「現場で生じていること」で分類して言語化してくれているのではないかと思う

私たちが養老さんの言葉にいつも気づかされるのは、目的やお題目といった「言葉」をそのまま真に受けて、自分の身体で実際の現場まで降りていかないから、「言葉」と「現実」の違いが分からなくなっているからだと思う

養老さんの言葉はずっと残るだろうけれど、できるだけ長く養老さんの存在にリアルに触れていたいと思う