ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 動的平衡

動的平衡福岡伸一さん著。久しぶりに読み返してみる。

人間の体は固定的なものでは全くなくて、いまこの瞬間も体の中で、タンパク質がものすごい勢いで作られてかつ、ものすごい勢いで壊されている。その、束の間存在するタンパク質が徒然に存在した”効果”として、僕たちは、生命は、ふわっとそんざいしている。川のみずはどんどん流れていくのに、そこに”同じ”川があるように。

福岡さんはその考え方を、自らの研究の失敗のなかで学んだ。ある遺伝子が発現しないノックアウト・マウスを作ったのに、全然支障なくそのマウスは生きていたと。複雑に絡み合いつつ動的な流れの中にある体内では、ある一つ機能に穴が開いていても、時間変化の中でどんどんそれを代替する作用が働いてしまうのが普通であると。

この動的平衡の視点は、DNAの二重螺旋構造の発見前から存在していて、一部の人は知っていたのだろうけど、日本ではおそらくずっと知られてなかった。今でも知らない人が圧倒的なんだろう。もっとも昔にいけば漢方や東洋医学系では逆に動的平衡に似た発想が、当然の知識としてあったんだろうけど。

現代では代わりに、体のイメージは機械論的で、薬やサプリメントを飲めばすぐに効果が現れるハズという、線形・単一的発想になっている。筋トレも同じ。

おそらく人の ” 意識 ” は「同時多発・相互連携的なコト」を捉えるのが苦手で、今はその ” 意識 ” が幅を利かす時代になっている。その結果、体の捉え方も " 意識 " が得意な範囲でとなり、固定的・線形的な発想になってきたんだろう。

つながるか分からないけど、最近流行りのAI(機械学習)が成果をあげられるようになったのは、線形・単一的なロジックによる処理をやめて(成果をあげられなかった!)、人間にはよく分からないモノゴトの捉え方をパソコンに(任せて)やらせたら上手くいったのだと。最先端はすごく動的平衡っぽいやり方だなと思った次第。