ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 創造的脱力

「創造的脱力」若新雄純さん著。

NEET株式会社や、鯖江市役所 JK課の発案者と知って、これは読まなくては!と。

著者の問題意識は、現在のよく出来上がった(そして硬くなった)組織に、少しだけ「ゆるいコミュニケーション」も入れることで、私たちが求めてる ” より心地の良い、楽しい状況 ” を少しでも作り出せるのではないか?という所にある。

例えば、市役所にJK課を作った際に、何をする所か分からない名前にあえてして、そこに集まった女子高校生たちに、何も課題を設定せずにおしゃべりをしてもらう。そのおしゃべりの中で自然に出てきた話の中から、自分たちが主体で不満やアイデアを、市役所や企業の力も借りて解決していくというやり方を提案して実行。

NEET株式会社は、集まった全員約160人が取締役になり、全員で議論して会社を運営しようとする。なにが無駄でなにが合理的かの常識をいったん忘れて、組織とその運営を0から自分たちで、作りつつ会社として回すという。

 

若新さんがすごいのは発想や実現力もそうなんだけど、自らが責任を持って最後まで付き合っていく姿勢だと思う。特にNEET株式会社のほうは、何時間も結論や結果のでない議論にご自身のどれけの日数や時間を費やしているのか。一緒に自由にゆるく話すことの可能性を信じているからこそ出来るんだろうけど、実際に出来る人は少ないだろう。でもその最後まで責任を持つ姿勢がこのアイデアを実現させる肝なんだろう。

個人的に会社で唯一「ゆるいコミュニケーション」が活発になるのが、年度末のパーティー企画。クライアントを招待するのでオフィシャルでもあるけど何をやってもいいし、誰が担当してもいい。思いついたことや、おしゃべりや、同僚やアルバイトの人たちの趣味の中から企画が出来上がっていく。パーティーの名前ですら固定ではないのが特徴で、パーティー自体が無くなってもたぶん誰も目に見えては困らないし、実際ない年もあった。

そのゆるい会話の中から生まれたパーティーのお土産品がある。原価はポケットマネー程度で、手間さえかければできる世の中に唯一無二のもの。それはおそらくクライアントが何年も何十年も大切にしてくれて、その間ずっと静かに会社の広告としても働いてくれる。それが生まれるまでは誰も考えもしなくて、今ではクライアントも同僚もアルバイトの人も毎年みんな楽しみにしてくれている。

そのパーティーが許される間は、会社もきっと大丈夫だろうと思っている

 

最後に若新さんの言葉を紹介して終わり。

「ゆるい」関わり合いの本質は、放置や放任ではありません。一緒に考えて、悩んで、楽しんで、一緒に「新しい何か」をつくっていくという共創のプロセスです。

 

NEET株式会社というのは…(中略)…社会問題へのソリューションではありません。人の意欲や、会社や組織そのものの意味を問い直してみるのが目的であって、存在そものが「問題」なんです。クエスチョンなんです。