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本の感想と体の感覚

本 遠い日の呼び声

宮崎駿さんが愛読している「遠い日の叫び声」by Robert Westall

遠い日の呼び声: ウェストール短編集 (WESTALL COLLECTION)

遠い日の呼び声: ウェストール短編集 (WESTALL COLLECTION)

 

舞台は1930〜40年代のイギリスやヨーロッパ。ナチス影響下の独特の雰囲気が流れている。戦争の暗さと日常の明るさが同居している。明るさは主に子供の視点から書かれているからだと思う。心を食べてしまう”悪”や、動物が意思を持って動いたり、儚い恋など宮崎さんの映画につながるものがたくさんある。

一番好きだった短編は、フェリシティというテニスの上手い女の子と、主人公ジミーの恋の話。テニスをきっかけに仲良くなる二人だけど、若さゆえの過ちと身分の違いが二人の前に立ちはだかる。甘酸っぱさの王道をいくお話で、自由に行動できない時代だからこその”良さ”がある。フェリシティが思いを込めて最後に手を挙げるシーンはイメージとして心に残る。後味がとっても良い。

一つだけ分からないセリフがある。二人が最初にテニスを通じて仲良くなる場面で「そんなこと、しなければよかったのに」と主人公が心のなかで思う。この表現が ”何に掛かっている” のかで文全体の意味付けが変わってしまう。原文を読んだらすぐに解決する話かもしれないけど、これをあえて宿題としてもらっておこうと思う。何年かたって読み直したときには答えは出てるんだろうか。