ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 気仙沼ニッティング物語

 この気仙沼ニッティングという会社は、小さく弱かったからこそ、結果として今の時代に一番必要とされる新しくて古い会社になっていると感じた。仕事の選択肢が狭い地方都市で、「子育てや介護と並行してできる仕事」である編み物のため、働き手を得ることができた。さらに大きな工場も作れないので手編みであり、品質とデザインは妥協を許さずに最高にした上で、その手作りの嬉しさをネットを通じて上手に伝えることで需要を生み出して、1年目から黒字に。

気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社

気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社

 

御手洗瑞子さん著。気仙沼で最高級のカーディガンやセーターを手編みで作る会社「気仙沼ニッティング」を立ち上げた記録。御手洗さんと言えば、ブータンで首相フェローという特別な公務員を一年間勤めた時の本「ブータン、これでいいのだ」 の著者でもあって、文体の手触りが優しい。

 

話を本に戻して、御手洗さんの仕事の周りを見つめると、社長である御手洗さんは地元の老舗の廻船問屋のお店の家に下宿。夜ご飯はみんなで食べるし、困ったときやツテを探すときはそのご家族に相談。贈り物も買い物もご飯も気仙沼の中でお金を落とすことが、目の前の相手の幸せにつながる。さらにお金だけでなく、仕事のお礼を仕事で返せる関係の近さがあったり。

周りの人たちから協力を得られるのも、御手洗さんの努力と人柄に依るところが大きいので一般化は難しいけど、これからの会社の一つのモデルなんじゃないか。会社がその場所に存在することが深く地元の社会に関わっている会社。関わっていく人のみんなが幸せな顔をしている会社。お客として仕事として関わりたいと思わせる会社。

何をしたいよりも、どう働くか?のほうが大事な気がしてきた。