ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 人生に疲れたらスペイン巡礼

この本はやばい。ふらっと、33日間800kmの巡礼の旅に出かけたくなる。信仰心はないけど。

スペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという街を目指して、800kmの徒歩巡礼の旅に筆者はでかける。理由は切実で、仕事でパニック障害に陥り、人生をどうにかしたい!という心機一転を賭けた旅に。

人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み、食べ、歩く800キロの旅 (光文社新書)

人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み、食べ、歩く800キロの旅 (光文社新書)

 

 作者は日本の社会での失敗の型を引きずったまま歩き始める。自由な旅なのに「歩かなければならない」とか「宿できちっと寝なければならない」とか。そんな心の重しが、5日、10日と、様々な人と出会う中で、どんどん消えていく。

離婚してきた人、就職に失敗した人、家族の会話を取り戻すためにきた人。それぞれの人が悩みつつ歩き、お互いに出会った人たちと食べ物を分け合い、話をして、喜び合ううちに、体がほぐれ、心がほぐれて、どんどん軽やかになっていく。

そしてたった一ヶ月の旅で、作者は始まりと全然違った状態にまで変わってしまう。おそらく日本に残してきた周りの人からしたら、一ヶ月でいったい何があったの!?と言われるくらいに。

いったい作者を変えたものは何なのかが気になる。

一つは「歩くことそのもの」なのは間違いない。スティーブ・ジョブスも大事なことを考えたり、話すときは山道を歩いてたっていうし。それも一日30kmとか限界近くまで歩く毎日は、体調を良くしたり、循環を良くしたり、とにかく動ける体を作ってくれるというのが大前提にあるのだと思う。

さらに「赤の他人と分け合う」というのがもう一つのポイントだろう。今まで全然知らなかった、縁もゆかりもない人たちと一緒にご飯を食べたり、話したり。自分は、他人は分け合いたかったんだ!って心の底から思えることがすごい癒やしになるんだろう。

最後はなんとなくだけど、道しるべとなっている「黄色い矢印」がキーなんじゃないかと。800kmの道の途中途中で、こっちへ行けと端的に示している黄色い矢印。毎日進むべき道をシンプルに示してもらえるのは、それをこなしている(=歩く)だけで達成感があるわけで、あとは全部自由にしていいという。

 

逆に考えると、日本ではこの3つを手にいれることが難しいんだと。いや、本当に難しいかは別として、この3つが必要なことが見えなくなっていたり、この3つを手に入れる自信が持てないように育てられることが問題なんだろう。

自分も含めて一ヶ月で人がガラッと変わるってことはそうそうない。特に大人になればなるほど。それが興味と時間と多少のお金を融通すれば一ヶ月で手に入る(かもしれない)となれば、こんなに投資効果の高いことはない。どうやったら行けるんだろう?何に自分は縛られているんだろう?それが分かるために旅に・・・!