ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 増補 21世紀の国富論

原丈人さん著。本気で今後数十年の日本(と世界)をどうやったら豊かに出来るのか?を国サイズや産業全体レベルで考えて実行してる人を初めて見た。 

増補 21世紀の国富論

増補 21世紀の国富論

 

 一つの産業ごとに固有の時代があって、今の閉塞感は新しい産業が育ち始めてないことが原因だと。新しい産業を興すには「新しい技術」が必要であるのだが、一つの産業を興すようなコア技術は5年10年といった時間をかけないと生まれてこない。しかし現在の株式市場では、長期の技術開発を行うことは「四半期で利益にならないため」株主の利益に繋がらないから行われない、という悪循環に陥っていると筆者は言う。

しかしそもそも企業は人間の必要を満たすために、ある一定規模の集団で生産することが一番効率が良いから発展してきたのであって、株主という仕組みはその生産の仕組みを資本の面から効率化するために後で発展してきたものだろう。

であるなら、資本主義をそもそもの企業の持っている役割を果たすのにより良い仕組みに変えればいいじゃないかと。それが筆者の提唱する「公益資本主義」。企業は株主だけのものではなく、従業員や地域の人やお客さんのためのものでもある、という考え方。

最近ニュースで分かりやすい例があったのだが、トヨタが2015年6月に発表したAA株の仕組みはまさに一つの例。AA株は株式の保有期間の最低年限条件があるもの。企業としては長期に株を持ってもらえるので技術に投資がしやすくなり、新しい技術が生まれやすくなり、企業が存続しやすくなり(従業員や地域社会に安定を与え)、産業が発展しやすくなり、景気が良くなり、皆が豊かになると。

そのAA株のニュースで複数のインタビューがあり、AA株に反対してたのはファンド・マネージャーだけだった。筆者がまさに想定していた通りの状況で、短期間で株を売り抜けて利益を上げることだけが目的のヘッジファンドにとっては許せない条件。でも多くの人にとって幸せな世界って、今の状態より公益資本主義に近いだろうことはマチガイナイ。

一回読んだだけで消化できないけど、本と現実との往復を続ける中で公益資本主義を含む原さんのアイデアを実現していきたい。