ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 悼む人

村上春樹さんのところ」というサイトで村上さんにメールを送ると、本人が読んで直接返事をくれるという企画があった(2015年2月くらいで終わり)。

実際にメールを出したら、メッセージに対して本当に村上さんから返事が来た。

村上さんの意識した記憶には残らないかもしれないけど、一瞬でも村上さんの中に自分が関わったという事実は、何かしらないけど嬉しい。

悼む人

悼む人

 

天童荒太さんの「悼む人」は、ある青年が縁もゆかりもない死者を悼む旅を続ける話。

人生で全く関わりのなかった人を、その人が生きていたという事実、きっと誰かを愛し、誰かに愛され、誰かに感謝されただろうことを、その青年は心に刻んで生涯覚えておこうとする。

それぐらい人が生きていたことは大きいことだ、って改めて考えると青年の行為は全然おかしくないような気がする。普段誰もしないだけで。

 

死んでしまった本人の気持ちは分からないけど、その死者の周りには生きている人がいる時もあって、その人たちにとっては青年が自分の近しい人(の死)を覚えておいてくれる行為は嬉しい気がする。

その青年がたとえ全然知らない人でも、自分が亡くしたものが切実であればあるほど、自分のなくしたものの大きさや輪郭や中身を分かるためにも、見ず知らずの真剣な青年と記憶を分かち合うことは、大切なことじゃないかと。

 

しかし、その青年は多くの人の業というか重さをどんどん抱えたら、どうなってしまうのだろう。

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村上さんは上述のサイトで2週間で3万余通のメールを受け取って、その何割かに返信を書いてるらしい。

それは、まだ生きている人を何かしら悼む行為のような気もしてくる。

きっと軽やかに口笛を吹きつつ、独自の距離感で、メールで送られてくる人生の断片を悼んでいるんだろう。