ココロミにきみ

本と体とプログラミング

本 心の扉を開く

「心の扉を開く」河合隼雄さん著

今週のお題「読書の秋」にぴったり。

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ユング心理学をベースに、自分の ” 心 ” を理解していくための本を紹介する本。

たとえば村上春樹さんや吉本ばななさんの小説が ” 何を書いてるのか ” が 、この本を読んでいくとわかる。

” 妻が突然いなくなった ” というのがストーリーとしてあったときに、そこで失われたものは、リアルな妻一人ではなく。

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妻ー妻の中の男性像アニムスー女性像アニマ

夫ー夫の中の男性像アニムスー女性像アニマ 

がまず存在し。

それぞれ同士の関係性、つまり図から考えると最大9つの関係性があるはずで、その中のいくつかが失われてしまったということなんだと。(河合さんは6つの関係と言っている)

さらにアニムス、アニマにはそれぞれ4段階の存在があり、そのどのレベルに反応しているかという視点も面白い。ロミオとジュリエットは第2段のロマンス的存在に互いに惹かれ、ペルソナとしての社会的側面に引き裂かれた。

心の扉を開く

心の扉を開く

 

この本を読んで、小説がなんのために存在するか、物語がなんのために存在するのかが初めて理解できた。人が無意識下で重層的に失われたものを伝えるために、その ” 不在 ” を表現するための時間なり空間が必要なんだと。

そして著者曰く、このことを知っている人は「何かが(ほかの人と少しだけ)違う」と他人から言われるのだという。もしそう言われる経験がある人は、知らないうちに心の中の世界のことを見つめながら生きているのかもしれない。

 

タイトルの「心の扉を開く」は伊達じゃない。

本 ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。

 「ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。」幡野広志さん著

今週のお題「読書の秋」

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著者は血液のがんを抱えており、幼い我が子に残せることはなにか?と考えたものが、ここに記されている。

これはもう、至言だと思うのだけど、

「 子どもがそうなって欲しい姿に、親である自分たちが今、なる」

たとえば、バスで運転手に「ありがとうと言いなさい」と子どもをしつけようとする親がいる。著者それに対して、親がつねに「ありがとう」と運転手に言っていたら、子ども自然に言うようになるだろうと。

ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。

ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。

 

自分の子どもに「他人に優しくあること、ちゃんと考えられる人であること、好きな道を選べること、行動できること」を求めたいなら、大人である自分たちがまずそうなれと。

子育ての本であり、自分が生きるための本。 

 

本  いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書

 「いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書」by 水野学さん

著者は ” くまモン ” をデザインした人

f:id:molingit:20181113234401j:plain くまモン - Wikipedia

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仕事の流れは極力パターン化してエネルギーを節約し、” クリエイティブ ” に全てを注ぎ込むやり方を説く

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①” 依頼の言葉 ” に囚われず、その仕事が作る未来の姿を徹底的にイメージする

②ゴールを決め、そのイメージをチームで共有する

③コンセプトを作り、それに従って全てを判断していくことを何度も伝える

④その仕事にかかる時間を想定し、自分の時間をブロック単位で捉え当てはめていく

⑤3時間毎に仕事の進捗を捉え直し、ペースを修正していく

⑥自分の来た仕事は手元に留めず、処理してどんどん次にパスする

⑦締め切りを確実に守って次の仕事につなげる

いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書

いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書

 

著者の言ってることは至極真っ当で知ってるつもりなのに、言われてみると守れてない部分が多々ある

この流れがまずきちんと踏めるだけで、クリエイティビティとか関係なく仕事ができる人の部類に入れるだろうな

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このトップダウン式のプロセスがきちんと身についた後ならば、逆にボトムアップのやり方を追求していくのも面白いかもしれない

手元に今あることを100%やりきることで生まれた次のステップで、また手元にあることを100%やっての繰り返しの中で、”何か”を生み出していくスタイル

たとえば脳科学者の池谷祐二さんは、世界で初めての精度で脳の活動を記録できる写真の仕組みを作り出したことで、そこに何が写るか?それは何に繋がっていくのか?という類の研究方法を採用している

それは目標や目的がないけれど、偶然を呼び込むことができて、自分を超えたものに繋がれるやり方

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行動科学の世界でいうと、最初にゴールが分かっているインセンティブ方式がこの本で、何が貰えるのか、貰えないのか分からないのがリワード方式で例えば池谷さんのやり方


まずはインセンティブ方式をちゃんとやることだろうけど、リワード方式が何か光ってるなぁ

本 バカのものさし

「バカのものさし」養老孟司さん著

子どもたちの疑問に養老さんが手加減なしで答える。子どもの視点(成長度合い)って年齢だけじゃなくて、人によって全然違うんだなと変に発見。

質問するような子たちは頭でっかちで、体を動かすのが下手なのがわかる。養老さんは体をつかう機会を減らしてしまった都市での生活が、この子たちを作ったという。

バカのものさし (扶桑社文庫)

バカのものさし (扶桑社文庫)

 

その答えの中で気になった2つの話。

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動物たちは、象、鳥、犬、猫など一文字で表す。人間を表すには ”人” も使うけど、言葉の使い分けがあると。

中国語で ” 人間 ” は ” 世間 ” の意味合いで、日本語でも ” 人間 ” という言葉を使うときは、” 世間の中にいる人 ” の意味で使われている。つまり、お母さんのお腹から生まれた瞬間から死ぬまでの間のこと。

この話から思いついたのが、 ” 死んだ人間 ” とは言わず ” 死んだ人 ” という表現をするのは、まさに世間から外れてしまったので、人間ではなく動物としての ” 人 ” があてられるのだと。

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もう一つは「コンピューター上の『人工生命』は生命なのか?」に対する答え。

生命というものを、われわれが頭のなかで定義したとたん、それはどうしても「情報」に変わっちゃうんです。むずかしいですか?われわれが生き物と呼んでいるものは、情報としては作れる。けれど、生命そのものは作れないと、まあそういうことです(本文より)

いつもの養老節が炸裂! 

「定義した途端に ” それ ” が情報に変わってしまう」このフレーズを覚えておこうと思う。都市では定義されないものは基本的に排除される。誰のものでもない ” 石ころ ” が道路に落ちてるのが問題になる。そして定義できるものはコンピュータが扱うようになる。

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「人(世間から外れる)の時間」を増やし、「一意に定義できないものを、どれだけ仕事に・人生に取り込めるか?」が、” ものさし ” になってくるんじゃないかと思う。

本 農家が教える 軽トラ&バックホー: 使いこなし方、選び方

本「農家が教える 軽トラ&バックホー: 使いこなし方、選び方」農山漁村文化協会

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DIY好きの人におすすめ。

軽トラとショベルカーの選び方、その使い方、工夫の実例、土の掘り方、固め方などなど、農業に関連する分野の「まずこれ一冊!」的なムック。

他にも荷台の紐の結び方から、泥からの脱出方法、畦道で軽トラに必要な出入り口のサイズなど、知っておけばトラブルをかなり減らせる。

運搬業の人にもトラックの荷の出し入れしやすい床敷のアイデアや、荷台に場所を取らないクレーンの設置など、本のアイデアが一つ使えるだけでも安すぎる買い物。

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今すぐに必要な環境にはいないけど、近い将来に、バックホー(ショベルカー)の3t未満の講習を受けて、リースで自分が必要なサイズを探してから、1tクラスか2tクラスを買いたい。

軽トラは旧規格のほうがデザインが好きなことが分かった。本に書いてあるチェックポイントをクリアしてれば中古で買うのもありなんかな。

無駄なページが一ページもない、善意の詰まった本。

本  できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか?

 「 できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか? 」臼井由妃さん著

できる先輩からアドバイスをたくさんもらった感じ。タイトルでもある「本屋で待ち合わせをする」というのはすごくいい方法だった。なんででしょう?
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お礼メールは12時間以内に出すとか、町の行列はそれが何であるか必ず確かめるとか、言われればそうだよね、というようなちょっとの工夫の数々。

一つ一つはなーんだ?って思うかもしれないけど、積もり積もれば、仕事の質を変えて、その人の評判を変えて、その人の人生を変えて、本まで書いてしまう。

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みんな、ひと工夫ってしないんだろうか?

できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか? この「ひと工夫」が一流の人生を作る。

できる人はなぜ、本屋で待ち合わせをするのか? この「ひと工夫」が一流の人生を作る。

 

 思うに、一つの工夫で効果があるのって、例えば効率3%UPとかなんだろうと。こんなの実感に全然ならないから、工夫を思いついても「続ける」のが難しい。 

でもこの著者のように、ちょっとした工夫を続けていくと、1つの工夫で効率が103%になるとすれば、それは掛け算になってくから4つで112%、10個で134%、20個で180%、30個で242%の効率になっていく。

つまり工夫を30個重ねたら、2.4倍の仕事が出来てしまう。そりゃ一流だかなんだかになるわな。

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ってことは、工夫は続けるからこそ実感できる差になって、ますます工夫を続けて何倍も仕事をこなす人と、自分の力1倍のままで仕事をする人に分かれるのだろう。

キーワードは、「工夫を続ける」こと。よーく肝に命じておきます。

p.s.冒頭の答えは、自分か相手の遅刻が勉強時間に変わるから。

本 こころと脳の対話

 「こころと脳の対話」河合隼雄さん、茂木健一郎さん対談

個人的な経験だけど、ひどい夢を見る人がいる。あまりにも辛い夢で朝起きたときには疲れ果てて、その日はもう何もできなかったりする。座禅をしたり心を落ち着けることができると、悪夢が減って日常生活が送りやすくなるという。

いったい夢はなんのためにあるんだろう?

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対談では、夢の一つの作用として「起きている時間に経験したことの補完作用がある」という。

たとえば今から自分がお金を借りようとする相手、A氏に対して、自然にそのA氏のことをいい人だと意識は捉えてしまう。A氏がいい人でないと自分が困るから。その時に、感覚はA氏が変であることを捉えてたりもするが、意識には上がらない。

それが夢の時間になると、A氏が変な格好で出てきたりする。感覚が捉えてた(意識に押さえつけられてた)部分が表に出て来るから。

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思うに、この段階でやっと、現実世界でおこったことが「全体」として経験されるんだろう。つまり経験全体として辻褄が合わなかったり、筋が通ってなかったりもするから、意識だけでは上手く扱えなく、夢まで含めてなんらかの受容をしているのかもしれない。

こころと脳の対話 (新潮文庫)

こころと脳の対話 (新潮文庫)

 

この本では脳科学の話は少なめで、茂木さん自身が体験してきた箱庭療法の話などをもとに、主に河合隼雄さんが心の話を説いていくのがメインになっている。

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個人的に興味を惹かれたのは、既存の「科学」で定義できない「新たな知のあり方」がそこにあるということ。

つまり、こころの問題は、それを扱う人の「関係性」や「一回性」を伴うので、「普遍的な再現性を要求する既存の科学」の範疇では対処できないし理論化できない。

しかし患者さんは治っていくから間違いなく心理療法などには意味があり効果がある。単に現在の「科学」の範囲にそれはない、と。

現在の「科学」で説明できないものは全て「宗教」か「オカルト」のように捉えてしまう人もいるとは思うけど、その話ではない。もちろん宗教自体にも価値があるのも言うまでもなく。

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この「科学と違うレベルで普遍的な方法論」はどう捉えればいいんだろう。現在の「科学」の定義を拡張するか、「新たな知のあり方の言葉」を定義するか。

思いつきだけで言うなら、既存の「科学」の分野はAIが席巻していくと思う。つまり人間に残された部分は、現在の「科学」ではない「新たな知のあり方」の分野だけなんじゃないか?

既存の「科学」は「AI科学」、残された「新たな知のあり方」が「Human科学」みたいになっていくかもしれない。